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【相談】 彼の速度 【由芽】

 交互に物語を書こう。リレイ小説、リレイ小説だ!
 男たちは、はしゃいでいた。

 はしゃぎすぎていた。
 反省している。

 僕は追い込まれていた。
 香陸さんの投稿スピードが早いのだ。

 一応、開始するときに、約束事をした。
 曰く、「最長で十日後までに次の物語を書くこと」

 しかし、香陸さんは今まで長くても五日で挙げてきている。
 素晴らしい速度である。

 内容も面白い。
 大変結構なことだと思う。

 先日、バタバタしていて、投稿が遅れていた。
 そのとき、香陸さんからメールがあった。

「さあ、三日前だ。そろそろ載せてくれたまえよ」
 愕然とした。

 催促だった。
 間違いなく催促だった。

 なんてこと。
 仕事以外でも催促。

 友達だと思っていたのに裏切られた気分だった。
 言いたくはないが知り合ってそろそろ丸十年にはなる。

 地獄とは他人のことだと言ったのは誰だったか。
 太宰?ドストエフスキー?

 わからないけどきっと作家だ。
 友達から催促された作家だ。

 慌てて書き始める。
 しかし、キャラの配置がおっつかない。

 とりあえず、放送メンバーのキャラづけを考えて、香陸さんにメール。
 そして skype にて相談。

 諸々アイデアの応酬。
 あーでもない、いやこれは違う、それは面白い。

 相変わらず実のある話をしていると思う。
 しかし香陸さんが言い放つ。

「まあ、とりあえず由芽さんの書くのにあわせてだよね」

 催促だった。
 またかよ、悪鬼め、と思った。

 血も涙もない奴だ、と思った。
 なぜなら事実だからだった。

 確かに香陸さんの立場からすると、僕が書くのを見て判断するしかない。
 僕が香陸さんの立場であってもそう言う。

 事実を突きつけられた。
 もうこれはだめだ、と思った。

 skype 終了後、とりあえず短いけれども書いて載せた。
 すると、香陸さんからメールがあった。

「そいではわたしは明日の0時にアップします」

 馬鹿じゃないの、と思った。
 心の底から馬鹿じゃないの、と思った。

 もう絶対楽しんでるなこの人、と思った。
 僕を追い詰めて楽しんでいる。

 聞いたところ、書き溜めているらしい。
 リレイ小説でそんなことがあり得るのか。

 確かに現在は視点が分岐しているので、書き溜めは可能だろう。
 しかし、実際にやるとは。

 僕は催促には負けない。
 期限ギリギリまで使って短いのを書き抜く。

 上京して、それぐらいの強さは得たのだ。
by kourick_yuume | 2011-07-30 16:40 | 相談