うむうむ、たしかこういった感じだったと思う。それを受けての僕の返しが「一理あるスタンスを保ったまま、逆切れしてちょっと面白い感じのポジションに持っていっているのがいやらしい」というもの。

 そういう、あの、姑息な男ですね、はい。わるいわー。

 僕は大体、飲むと記憶が飛ぶからいまいち覚えていないんだけれど、「お婆ちゃんの家にしかないお菓子がある」という話はさすがに面白かった。あれはまだまだ考察する余地のある謎だよ。
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# by kourick_yuume | 2011-11-04 01:54 | 日常

 あーなるほど。そういった感じだったか。ありがとう。つかえが取れました。

 ついでだから諸々あの時出ていた話題や行動を断片ながら書いてしまうと、

 ・『走れメロス』はスポーツか物語か
 ・この部屋、灯油がない
 ・寒すぎるから寝袋出して
 ・ドンキにダーツの矢って売ってます?
 ・ダーツの矢買うくらいだったら灯油買ってくる
 ・麦わら帽子でもトモダチの物まねは出来る
 ・壁ドンして来た下の住人は女性らしい
 ・でも壁ドンした下手人(悪いのは我々だから失礼だけど)はその彼氏
 ・お婆ちゃんの家にあるお菓子は、寒天っぽいモノの周りに砂糖っぽいモノがついたモノ

 あと何かありましたっけ
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# by kourick_yuume | 2011-11-04 01:38 | 日常
 なんという欠席裁判(笑)。僕はこういうのはいけないと思うけれど、それはさておき(いいのか?)、そのあたりのことは覚えているよ。

 たしか被告の言い分は「職場の女性たちを食事に誘っているだけなのに、それを社会人としてあるまじきというような言われ方をするのは納得がいかない」というもの。

 もっと言うなら、「むしろ、職場の人間関係を円滑にする一助を担っているのだから、褒められたって良いのに」くらいの感じ。

 一方、原告の言い分は「社会的に責任のある立場なのだから、複数の女性を二人っきりの食事に誘うというような無節操なことを疑われる行動は控えたほうが良い。というか理解できない」というもの。

 さらに言うなら、「むしろ、その女性たちを狙っているならまだわかる。しかし、被告は狙ってもいないらしい。それは相手を誤解させることにもなるからやめなさい」といったところ。

 こういった流れを受けて、下の階の住人に壁ドンされても収まらないほどクソ酔っ払ったわれわれの煽り合いのなかから出てきたのが、

「(周囲の人たちに)そんなことを言われるくらいなら、やりたかったですよ! (そういうことをやってて言われるなら納得できる! そういう下心を持っていたなら了承できる! しかし、ない! なかったのだ! だから、わたしは、いま、持ちます!) だったら、やらせてくれよ!」

 という、魂の叫びだったのだ。
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# by kourick_yuume | 2011-11-04 01:25 | 日常

 なんとなく。なんとなくですよ。以下のような方向性の解説だったと思う。
 香陸さん曰く、

 つまり、本当になにもやっていないのにも関わらず、周りから「男としてダメだろ」という、いかにも本当にやってしまったかのようなツッコミを頂戴するくらいなのであれば、実際にちゃんとやってしまった上で、そういったツッコミがくるならしょうがない、という気持ちでいたいんだろ?

 というような感じだったと思う。
 詳細は違うと思うけれど、大まかな流れはあっていると思う。
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# by kourick_yuume | 2011-11-04 00:31 | 日常

 仕事をしていたらどうしても気になってしまったので、ここで香陸さんに解説を求める。

 先週の金曜日、友人の結婚式で札幌に帰省して、恒例行事である香陸さんとバント職人さんとの飲みに参加しました。相変わらず楽しい時間だったのだけれど、その中で以下のような話題が出たのです。

 バント職人さんが会社で複数の女性に対して、よくご飯の誘いをするらしいのです。いっぺんにではなく、たまたま帰る時間が一緒になった方に対して、ご飯を食べて帰りませんか、と。が、それがどうも男としていかんというツッコミをよく受けるらしいのです。それに対して、バント職人さんが釈明するに曰く、

バ「つまり僕は、一人でご飯を食べるのが嫌なだけなんですよ」
由「はい」
バ「だから、ほんとにご飯を食べて帰るだけなんですよ?なにもしてないんですよ?なのに、周りの人がそれはバント職人、ダメだろと。男としてダメだろと」
香陸「ふむ」
バ「だったらやらせてくれよ、と。僕は言いたいわけですよ!」

 もうこの時点で僕は大爆笑だったのだけれど。ここ数ヶ月で一番笑ったくらい笑ったのですけれど。何故あんなに笑ってしまったのかが思い出せなくて。
 確か香陸さんがしっかりとこの後、諸々解説してくれたはずなんですけど、それを失念してしまって・・・。すいませんがもう一度解説して頂けませんか。
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# by kourick_yuume | 2011-11-04 00:01 | 日常
 締め切りまであと五時間という状態なので焦って現実逃避。

 見ているなあ。自分は全然見れていません…。ギルティとブレイクブレイドとラストエグザイルくらいだろうか…。ギルティは今後どうなっていくかというところなんだけれども。ブレイクブレイドに関して言えば、あれはもう枠組みの問題だと思う。枠組みというのはつまりクリエーター側ではなく、プロデューサー側ということで、平たく言ってしまえば、あれを空の境界のような構成でアニメ化しようとした時点でハンデを背負いすぎている気がする。原作を読めばなんとなくその理由がわかる。と思う。

 ラストエグザイルに関しては、貴方と全く同じ心持ちだったので安心した。正直に言ってしまうと、あの一話はしんどかったのだ。説明のための一話を見せられても、単語が流れるだけで興味が持てない。事実、どうやらなんか大変らしいな、ということを漠然と思っただけだった…。国の名前とか一つも覚えていない。自分だけだろうか…。

 ところでこれを書いているときに、隣の家からおそらく女性が化粧水を肌に滲みこませるために頬を叩く音が聞こえている。ペチペチペチペチ。『おとなり』という岡田准一さんと麻生久美子さん主演の映画があって、要するに顔も知らない隣人の生活音が、いかに自分に影響を与えているか、その二人がどうなっていくかということを描いた映画なのだけれども、それを少し思い出した。良い映画だった。

 さらにところで、相談したいことがありますよ。
 近々スカイプよろしくです。
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# by kourick_yuume | 2011-10-24 06:23 | 日常
 僕の経験上、残高が勝手に増えるのは退職金でFA(*勝手に増えているわけではありません)。ちなみに勝手に減った場合は税金ですね(*たまに勝手に減ります)。

 日常的にあまり現金を使わないから、もう、お金はモニタ上の数字になりつつあるんだけれど(幸いなことだ)、桁の大きいほうが様々な権利を行使できるようで、より自由かもしれない。もし子供が不自由だとしたら、それはお金が足りないこと、知識が足りないこと、そして、年齢が足りないことに起因している(ただし、身体的な束縛はないものとする)。

 ゆえに大人が不自由だとしたら、それは年齢が足りているのに、お金と知識が足りないことに起因している。とは言い切れないのが、人間社会のなかなか奥深いところだ。子供は尽きることのない欲求に支えられているが、はたして大人はどうだろう。いい加減、自由を浪費したいのだが、その目的がない。これもまあ、不幸かもしれない。

 そんなわけで、いろいろ見てますよ。いまのところの感想。

【ベン・トー】
 正直、面白かった。見ると思う。
 悠木碧さんはしっかりしているなと思った。

【gdgd妖精s】
 正直、悪くなかった。見ると思う。水原さんの声、好きだし。
 ちなみに、明坂聡美さんとうえむらちかさんのラジオは面白かった。 

 http://www.nicovideo.jp/watch/sm12544914

【未来日記】
 漫画で充分。
 もし原作を読んでなかったら、けっこう楽しみにしていたと思う。

【イカ娘】
 正直、面白かった。
 むしろアニメオリジナルの部分が美味しかった。

【WORKINK!!】
 山田、万歳! 見ると思う。
 わいわいがやがやネットの評判を読みながら見るアニメ。

【君と僕。】
 本当にごめんなさい、僕が悪かったです、ごめんなさい。
 素人が手を出してはいけないアニメだった。一話でさようなら。

【ペルソナ4】
 トリニティ・ソウルが半腐りだったから、疑心暗鬼。会社違うけど。
 菜々子ちゃんに癒されるため、たまに見るかもしれない。

【真剣で私に恋しなさい!!】
 これはないだろうと思っていたら、意外と面白かったで賞。
 松風押しになってきたら見る。ストーリはまったくわからない。

【ギルティクラウン】
 ん? ん~、んんんん~、あ~。

【たまゆら】
 ARIA好きだったし、立体パズル回しながら見てる。
 どうして深夜にやっているのか謎のアニメ、かつ、ただの井口裕香。

【UN-GO】
 毎週見る必要はなさそうだから、毎週は見ないかも。
 そんな割り切りのできるノイタミナ。なんだかかんだか。

【銀翼のファム】
 ゴンゾの良心。とりあえず、なにが起ころうと最後まで見る。
 一期のOP/EDのような高揚感はなかったけど、楽しみ。

 すごい期待しているんだけど、自分の期待に本気にならない。
 ゴンゾを見続けてきた僕の心構えに死角はなかった。

【Fate/Zero】
 小山さん、速水さん、中田さん、最初の五分で椅子に座りなおす。
 設定はまったく頭に入ってこなかったけど、ちょいちょい見るかも。

 というか、あの気合の入り方はなんなのだろう。
 全編通して見るかどうかはわからないけど、部分的には見る。

【廻るピングドラム】
 とりあえず最終話まで見る。
 いろいろ解釈したい欲求に駆られるけれど、まだグッと我慢。

【カッコカワイイ宣言】
 もちろん、見てる。
 このDVDは、金で買える! かつ、ただの日笠陽子。

【ブレイク・ブレイド】
 四話まで期待して見ていたんだけど、五話でズコー!
 わけがわからないうちに終わっていた。
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# by kourick_yuume | 2011-10-21 12:00 | 日常

 先ほどコンビニのATMでお金を下ろしたのだけれど、預金残高が増えていたことに驚いた。

 「おい、ちょっと待ってくれよ」と思った。

 全く心当たりがない。
 増えた金額は大したことないので、別にすぐに生活がどうこうなるわけではないのだけれど、勝手に増えられると困る。減るよりはいいけれど、自分の目につかないところで、生活を支えている「お金」というものがやりたい放題に行動を始めると混乱する。たぶん今夜は気になって寝れない。

 それにつけてもまだここのパスワードを空で打てることにも驚く。
 今期のアニメなにか見ました?
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# by kourick_yuume | 2011-10-20 20:13 | 日常
大丈夫だ、問題ない。

僕は暑いから、ホント、寝てる。
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# by kourick_yuume | 2011-08-14 00:00 | 日常
 香陸様。

 例の話し合いがあり、お互いによし頑張るかと気合をいれましたが。

 たった今、年内で急な仕事が舞い込みました。
 こういうときに限って…。

 反骨精神で、「いいよ、やってやんよ」と逆に例の話し合いのものを書く意
 欲が強まったのが唯一の救いでしょうか。
 でも急すぎる…。
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# by kourick_yuume | 2011-08-10 09:16 | 日常


【残りの日数:323日/放送回数:5049回】

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

 メンバー一問一答ー。
 本日は巴婆さんです。
 このコーナーに登場は初めてですね。では、行きます。

 ・お名前は?
  巴。
 ・ご出身を。
  北海道。
 ・結局おいくつなんですか?
  男だろ、このメール。世間を知りな。
 ・この放送をやる前は何をしてましたか?
  放浪。
 ・音楽データ、私の世代にぴったりです。一番好きなアーティストは?
  ボブディラン。
 ・結婚してんですか?
  だから、世間を知りなって。
 ・血液型を。
  聞いてどうすんだ…。AB。
 ・座右の銘は。
  考えたこともないな。
 ・好きな言葉は。
  んん。人は、生きるために生きていい。
 ・メンバーの中で誰が一番好きですか。
  自分。
 ・では、一番苦手なのは?
  吉川。食べすぎだ、あいつは。
 ・異変の前と後では何が一番変わったと思いますか?
  人。
 ・異変の前に戻りたいですか?
  いいや。考えたこともない。
-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

 放送後、巴婆さんと井戸端。
「昔に戻りたくはないっていうの、本当ですか?」
「なに?」
「いえ、さっきのコーナーで」
「ああ。あんたは戻りたいのか?」
 少し、真剣になって考えてみた。
「…よくわかりません。私は、生まれたときからすでに異変の最中でしたから」
「それでも、今とじゃ状況が違うだろ。例えば九州にいたときは、水の消費に気を使うこともなかったし、コンビニだって数分のところにあっただろ?」
 既に前世くらい遠い昔のような気もする。
「…あのときに、戻りたいとは思いません」
「なんでだい」
 皆が一緒だからだろうか。放送をしているからだろうか。
 恥ずかしくて両方とも口には出せないけれど。
「ところで、巴婆さん」
「なんだい」
「本当に、いくつなんですか」
 巴婆さんは、ははっと笑った。

「世間を知りな」


【残りの日数:322日/放送回数:5050回】
 やっぱり5050回記念開催。

「なに?!王様ゲームも知らんのか!」
 ……すいません。
「だめだよ雪ちゃん。これくらい知ってないと、パーソナリティはつとまんないよ」
 そんなに有名なゲームなんですか。
「当たり前だろう。俺らの時代だと、合コンの定番だ」
 …合コンってなんですか。
「は?合同コンパだよ、合同コンパ」
 …コンパってなんですか。
「……雪ちゃん、そこに座りなさい。説教だ」
 えー。

 それから、三十分に渡って吉川さんから説教と王様ゲームの意義についてのレクチャーを受けた。
 そして私が激怒。
「よーするにそれ吉川さんがセクハラしたいだけじゃないですか!」
「馬鹿なこと言うな!飲み会のネタを知っておくのも大事だろう!」
「そーいうことじゃなくて!実際にやる必要はないでしょうが!」
「何事も経験だ!」
 ぶーぶー私が訴えるも、味方だと思っていた綾子ちゃんが「え、私やったことある」と裏切り、結局開催される羽目に。

「なんで俺が巴婆さんとキスしなきゃいかんのだ!」
「なんだ吉川。私じゃ不満か」
 なぜかことごとく巴婆さんがあらゆる命令に絡む事態になり、わりとあっさり終了。

 昔の人の考えがわからない。
 コンパって何が楽しかったのだろうか。


【残りの日数:321日/放送回数:5051回】

 相変わらず綾子ちゃんが例の地下都市のおじさんの件を気にしている。
 確かに気になるが、どうしようもない。

 今のところ、放送に関して支障は出ていないけれど。


【残りの日数:320日/放送回数:5052回】

 今回の買い物(倉庫漁り)は、私と坂本君が当番。
 本当は坂本君じゃないのだけれど、前回のおじさんの件があったので、坂本君がついてきてくれることになったのだ。
 倉庫には、誰もいなかった。私たちはいつも通りそりに缶詰を乗せ、残量を確認し、倉庫内で小休止することにした。
「坂本君、ありがとうね」
「何がっすか?」
 私は、前回のおじさんの件のお疲れ様会で、巴婆さんと話した内容を坂本君に伝えた。
「坂本君、怪我までさせられたのに、おじさんを見捨てなかったでしょ。やっぱり嬉しかったよ」
「……」
 何か傷ついたような表情だった。そんな坂本君の空気は初めてだった。
「……僕がこの放送に参加した理由は、言ったことがなかったっすよね」
「うん」
 というか、私は誰の理由もはっきりとしたことは聞いたことがない。
 私自身、放送に参加して日が浅いということもあるのだろうけれど、何となくそれに関しては聞かないのが不文律になっているのだ。坂本君は酔っ払うと特警の駐屯地から抜け出して来た話をよくするけれども、そもそも何故特警にいたのか、なぜそこを抜け出して来たのかなどは、一切聞いたことがなかった。
「……震災の時、東京に起こった多発暴動、知ってるっすか」
 私は頷いた。知らない人間はいない。
 世界の気温が下がり続ける中で起こった東京への大規模な地震。それにともなった地下都市への移住や、怪我人への治療を巡って起こった暴動。小さなものは現在でも、きっと日本のどこかで起こっている問題。
 私の両親は震災で死亡し、その情報を得て私が東京に向かったとき、東京は多発暴動の真っただ中だった。
「俺、その時に民間の特警にいたんす。西東京の特警でした。暴動が発生した時は、委員会も…あ、暴動を抑えるために組織された委員会なんすけど、そこもめちゃくちゃ混乱していて…。正直、特警なんて、自分や自分たちの親戚を逃がすことしか考えてなかったんす」
「…特警があまり機能していなかったのは聞いてる」
「どの指示が優先なのかもわからないまま、俺たちの班はとにかく目の前の人間をさばいてました。一人でも助けるために。でも……」
 坂本君は言葉を切った。
 目には涙は浮かんでいなかったけれど、明らかにそれは泣いている姿だった。
「俺、助けれらなかったんです。何人の人を見捨てたか、わからないくらいに…」
「……」
 なんて言っていいのかわからなかった。
 私は坂本君のように優しくないし、涙がないのに泣くほどの使命感と罪悪感を背負ったこともなかった。
 罪はないよ、とか坂本君は頑張ったよ、なんて言えるはずがなかった。
 だけど、理由を言ってくれた坂本君に、何かを応えたかった。
「坂本君。帰り、ちょっと寄り道いいかな」

 当たり前だけれど、そこは真っ白な雪に覆われていた。
 目印は、遠くに見える駅前のビルの屋上らしきものくらいだ。
「ここは…?」
「私の家の残骸が、ここらへんに埋まってる。たぶんね」
 正直に言えば、小学校に入ると同時に九州に行ってしまったので、あまり実家という実感はないのだけれど。
「両親を地震で亡くした話はいつかラジオでしたよね?」
「はい」
「私が東京に着いたとき、既に父さんと母さんは死んでいて、安置所に運ばれた後だった。暴動があちこちで起こっている中で、何とか運ばれた安置所を突き止めて、そこに向かったの」
「……まさか、まだ?」
「ううん。その時は震災からそこまで時間が経ってなかったせいか、安置所ですぐに両親と再会できた。父さんの背中の傷を見せられたの。お母さんを庇うようにして建物の下から発見されたって。立派な父さんですねって」
「……」
「…感覚がマヒしてたわけじゃなった。ちゃんと悲しかった。でも、泣けなかったんだよね。周りには、たくさんの遺体があったから、何か、その中の一つになっちゃったみたいだった。父さんたちも、私も」
 周りの泣き声がまさしく他人事として私の耳に入ってきたのを覚えている。
 あとは、匂いだ。遺体の匂いではなく、私のコートに降り続けた雪が溶け、水になって、そこから立ち上る独特の匂い。
「わからなくなっちゃったんだよね。何しに東京にきたのか。父さんたちが死んだって聞かされたとき、私は九州の親戚の家にいて、そのときは涙が出て、あ、迎えに行かなきゃって思った。だけど、いざその光景に立ち会ってみるとね…。なんだろう、すごく、現実感がなかった。で、その安置所を動けなくなっちゃって…。そのときに、放送が耳に入ってきたの」
「All Night World?」
「そう。ちょうど、父さんたちの名前を読み上げた回だった。当時はまだ、放送室とかの機材は使ってなかったの。体育館の隅にパソコンだけ運び込んでいてね」
 確か、男性のパーソナリティーだったはずだ。当時はもっと淡々としていた番組だったが。
「そのとき、ああ、なるほどなって」
「…何がっすか?」
「自分が、東京に来た理由。父さんたちの亡骸がある目の前で、その事実を淡々と誰かに伝えてもらいたかったのかもしれないなって」
 父さんたちの名前はそれこそ多数の人の名前の中に埋もれていた。時間としては、二人合わせて五秒もなかったはずだ。
「もしかしてっすけど、その安置所って…」
「そう。三鷹市立第三中学校。それ以来、私は放送を手伝ってるの」
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# by kourick_yuume | 2011-08-06 00:47 | お話
 地獄から今晩は、亡者です。
 さて、そろそろ七日目なので催促しようと思う。

 「地獄とは他者のことだ」と言ったのはガルサンである。
 ガルサンとはサルトルの戯曲「出口なし」の主人公のひとり。

 内容の説明はさておき、
 サルトルはこの戯曲の公演後、こう語っている。

 「地獄とは他者のことだ」という言葉はずっと誤解されてきた。わたしがそれによって意味していることは「他者との関係は常に毒されていて地獄のようなものだ」ということだと思われてきた。しかし、わたしが本当に言いたかったことは、まったく違う。

 わたしが言いたかったのは、もし、誰かとの関係が捻じれ、損なわれてしまったなら、他者とは地獄にすぎないということである。

 どうして?

 ・・・なぜなら、わたしたちが自分自身について考え、自分自身を知ろうとするとき、・・・わたしは他者がすでに持っているわたしについての知識を用いる。わたしたちは、他者が持っており、そして、わたしたちに与えてくれる財産を用いて自分自身を判断するのだ。

 わたしがわたし自身についてなにかを言おうとするとき、わたしがわたし自身のうちになにかを感じるとき、それがどのようなものであれ、そのなかには常に、他者の判断が入り込んでいるのである。

 ・・・しかし、そのことは、他者とは関係を持つことができないということをなんら意味しない。それはたんに、わたしたち一人一人のために、あらゆる他者の最大限の重要性を引き出すのである。

(ところどころ意訳)


 どうもわかったようなわからないような言い草だけれど、
 かろうじてわかるような気のするところも、あるにはある。

 それはつまり、地獄とは場ではない、関係だということである。
 さて、そういうわけだから、さあ、そろそろ書こうか。

 ^(#`∀´)_Ψ
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# by kourick_yuume | 2011-08-06 00:00 | 日常
 交互に物語を書こう。リレイ小説、リレイ小説だ!
 男たちは、はしゃいでいた。

 はしゃぎすぎていた。
 反省している。

 僕は追い込まれていた。
 香陸さんの投稿スピードが早いのだ。

 一応、開始するときに、約束事をした。
 曰く、「最長で十日後までに次の物語を書くこと」

 しかし、香陸さんは今まで長くても五日で挙げてきている。
 素晴らしい速度である。

 内容も面白い。
 大変結構なことだと思う。

 先日、バタバタしていて、投稿が遅れていた。
 そのとき、香陸さんからメールがあった。

「さあ、三日前だ。そろそろ載せてくれたまえよ」
 愕然とした。

 催促だった。
 間違いなく催促だった。

 なんてこと。
 仕事以外でも催促。

 友達だと思っていたのに裏切られた気分だった。
 言いたくはないが知り合ってそろそろ丸十年にはなる。

 地獄とは他人のことだと言ったのは誰だったか。
 太宰?ドストエフスキー?

 わからないけどきっと作家だ。
 友達から催促された作家だ。

 慌てて書き始める。
 しかし、キャラの配置がおっつかない。

 とりあえず、放送メンバーのキャラづけを考えて、香陸さんにメール。
 そして skype にて相談。

 諸々アイデアの応酬。
 あーでもない、いやこれは違う、それは面白い。

 相変わらず実のある話をしていると思う。
 しかし香陸さんが言い放つ。

「まあ、とりあえず由芽さんの書くのにあわせてだよね」

 催促だった。
 またかよ、悪鬼め、と思った。

 血も涙もない奴だ、と思った。
 なぜなら事実だからだった。

 確かに香陸さんの立場からすると、僕が書くのを見て判断するしかない。
 僕が香陸さんの立場であってもそう言う。

 事実を突きつけられた。
 もうこれはだめだ、と思った。

 skype 終了後、とりあえず短いけれども書いて載せた。
 すると、香陸さんからメールがあった。

「そいではわたしは明日の0時にアップします」

 馬鹿じゃないの、と思った。
 心の底から馬鹿じゃないの、と思った。

 もう絶対楽しんでるなこの人、と思った。
 僕を追い詰めて楽しんでいる。

 聞いたところ、書き溜めているらしい。
 リレイ小説でそんなことがあり得るのか。

 確かに現在は視点が分岐しているので、書き溜めは可能だろう。
 しかし、実際にやるとは。

 僕は催促には負けない。
 期限ギリギリまで使って短いのを書き抜く。

 上京して、それぐらいの強さは得たのだ。
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# by kourick_yuume | 2011-07-30 16:40 | 相談
 午後9時12分、雪下都市直上、コンベンションセンターのエントランスフロアにあるソファに腰かけながら、松来は悩んでいた。

「忘れているのか忘れていないのか、それが問題だ」
 松来は一分間だけ悩もうと決めていた。それだけ悩めば、もう帰ったっていいだろう。どうせ帰るために悩んでいるのだから、時間の長短は関係ない。少しの間、ここに座り、ちょっと疲れた自分の様子が誰かの瞳に映ればそれでいい。

 もし、そのほんの少しの迷っている時間に自分の行動を変更するだけのイベントが起こったなら、それに従うというのもやぶさかじゃない。それはそれで迷っているふりをした甲斐もあるというものだ。

「人は忘れていることはできても、忘れることはできない」
 松来は誰ともなしに言う。
 数か月続いた緊張の糸も解け、疲労が身体中にまわりだしていた。

 松来は息をふうと吐き出す。さっきから、ハーネスの左腹のポーチに収まっている携帯電話がバイブレーションしていた。罪悪感の種が松来のなかでささやかにうごめく。それが止まると、次はその隣のポーチに収まっている携帯電話が不機嫌そうにバイブレーションを始めた。

「ふり。気付かないふり、忘れているふり。ふりとふりでないものを、人はどうやって見分けるのだろう」
 松来は哲学者然とした口調で言う。しかし、不本意ながら松来は哲学者ではなかったし、そのふりをすることもできなかった。人はいったい、どうやったら哲学者になれるのだろう。誰かが「なにかになる」というのはどういうことだろうか。そのふりをすることと真正のそれであるということは、いったいどうやったら区別できるのか。

「いや、そのために人は確認し、認定し、定位する、自覚は名前のあとにある。ただ、それにしたって、人間というのは忘れやすい。忘れたときのために連絡を取ろうとする人物がいるにもかかわらず、その連絡にすら気付かないということがあるありさま。まったく困ったものだが、はたして、それは罪だろうか、あぁあ」
 携帯電話のバイブレーションが止まった。

 松来は恐れる。右腹のポーチに収められたイリジウム携帯電話が鳴りだしたらどうしよう、それどころか足許に置かれた小型無線機に連絡がきたらどうしたらいいのか。松来はいくつか言い訳を考え始めようとしたが、そろそろ一分経ったような気がしたので帰ろうと決意する。

「先輩!」
 会議室のほうから声をかけられたような気がした。知っている声だったけれど、彼女にとっての先輩はたくさんいるに違いないし、自分は先輩という人間でもなかったので松来は無視を決め込む。

「先輩! マツライさん!」
 声をかけてきた女性、笹見は松来に近寄るとソファの前で仁王立ちした。

「待っててっていったじゃないですか」
「忘れてた」
 松来は言う。
 自分はいろいろなことを忘れるし、忘れているのだ。

「それはそれとして、これ、どうぞ」
 笹見は携帯電話を松来に差し出した。
 でろ、ということらしい。
「誰?」
「竹成さんです」
 笹見は驚いたという感じに言う。
 めったにかかってこない人物からかかってきたという感じだ。
「どうして?」
 松来は訊き返す。
 このやりとりもおそらく電話の向こうの人物に聞こえているだろう。
「知りません」
「でなきゃダメ?」
 松来は笹見を見上げ、声を潜めて言う。
「あたしが怒られます」
 笹見は眉間に皺を寄せ、哀しそうに言った。
 そのあと、この言い方では通じないかもしれないと思ったのか、
「マツライさんも怒られます、たぶん」
 と言い足した。

 松来は覚悟を決めて笹見の携帯電話を受け取る。
「こんばんは、松来です」
『お疲れさま、大変だったね』
 受話口から竹成の、まるで労わっているような言葉が聞こえてきた。
「本当にもう、疲れましたよ。もはや歩けないかもしれません」
『そうか。しかし、そこで寝るわけにもいかないだろう』
 竹成はなんとも冷静に受け答えする。
 松来はこういうタイプの人間をもっとも苦手としていた。

「笹見さん!」
 そのとき、会議室のほうからもう一人、大男が駆け寄ってきた。目の前で仁王立ちしている笹見に向かって突進してくると直立姿勢で立ち止まる。北方観測隊の第二分隊長、頼りになる漢、冬季遊撃レンジャーの範田だ。大袈裟な言い方ではなく、松来は今回の行軍視察において、二度、この範田に生命を救われていた。しかし、作戦行動中の毅然とした態度とはうってかわって、範田はいま、笹見に対する好意を最大限に表現しようとあたふたと不器用にもがいていた。

「いやあ、本当に御苦労様でした。視察も楽じゃなかったでしょう、とにかく寒かった。ほとんど演習に近いものだったと自分は思っています。訓練のときから笹見さんは素晴らしく優秀でしたが、行動中も見事だったと思います」
「ええ」
 笹見は引き攣った笑みを浮かべながら、ちらちらと松来を見る。助けを求めているのか、この状況をどう判断するのかを窺っているのかのどちらかだろう。もともと気が強いからそうやって気の弱いふりをするのだろうと松来は思う。
 じとっと眼球だけ持ち上げて笹見と目を合わせると、松来は黙って笹見から視線を逸らした。

「それでなんですが、このあと、どうですか。いえ、お疲れのこととは思いますが、隊の連中も少し気をほぐしてから帰るのが何名かいますし、もしよろしければ、ご一緒していただけると連中も気が紛れるといいますか、喜ぶといいますか、ようするに士気が高まるわけでして」
 よくわからない誘い方だ。
「ええ」
 笹見のうろたえる様子を感じながら、松来は竹成との会話を続けた。

「そうですね、そんなみっともない真似はできませんね」
 松来は心もち声を張って応対する。
『そうだ、今日は宿舎に帰ってゆっくり休んだほうがいい』
「はい、僕もそう思います。今夜はもう、このまま帰ってグッスリ」
 松来は口先に希望を滲ませる。

『うん、約束通り、知事のところに寄ったら、そのまま休暇をとるといい』
 中盤を強調して、竹成が言う。
「そうですよね」
 松来は肩を落とす。今日中にもう一仕事だ。
 それにしても、なにを子供みたいなことを自分はしているのだろう。
『忘れていたらいけないと思って、いちおう連絡させてもらった』
「ありがとうございます」
 白々しいやりとりだったが、竹成には有無を言わせぬ迫力があった。

『私もすぐに行くから、待っててくれ』
「はあ、なるほど。わかりました」
 松来は「はい」とは答えない。竹成に捕まったら、そのあとどのくらい拘束されるかわかったものではない。竹成の「言っていることはわかった」という意味合いで「わかりました」とだけ返事をする。まさか竹成も本当に自分が待っているとは思っていないだろうと決めてかかる。竹成からもそれ以上、言質をとるような追求はなかった。

『そのあたりに範田さんもいるんだろう?』
「ええ、いますよ」
 松来は答える。
 さっき笹見にかけた声が聞こえていたのだろう。
『コンベンションセンターからエレベータで「マンション」に降りてきてもらえるよう伝えてくれ。15階のA号談話室にいる』
「結婚相談ですか?」
 目の前で繰り広げられている男女の攻防をみながら松来は言う。

『ん? なにを言っているのかわからないな』
 それもそうだ。
「失礼しました。アポイントメントは?」
『今日とは言っていないが、わかるはずだ』
 あるのかないのか。
「ご自分から伝えたほうが確実じゃないですか」
『いや、二度手間だ。君から伝えてくれ』
「範田さんも疲れてますよ、いまからは難しいと思いますけど」
『今日じゃなきゃだめなんだ』
 竹成がきっぱりと言い切った。

『君にも言うぞ。今日じゃなきゃだめだ』
 それだけ言って、竹成は携帯電話を切った。
 松来はガックリと肩を落とす。誰かに「どうしたんですか、ここにガックリと肩が落ちていますよ」と落ちた肩を拾ってほしかったが、唯一、そんなことを言いそうな人物はいま、目の前でプロポーズされていた。

「範田さん」
 松来は声をかけるが、範田はまったく気付かなかった。
 もしかしたら、そもそも範田の目に松来は映っていないのかもしれない。
「範田さん」
 松来がもう一度、声をかける。
 気付いたのは笹見だった。

「どうしたんですか、松来さん? 範田さんに重要な連絡ですね」
 笹見のその言いように松来は苦笑しそうになる。
「まあ、そうだな」
 松来が言うと、範田は露骨にぶすっとした表情になった。
「なんだ?」
 声色まで違う。
「竹成さんから連絡です。コンベンションセンターからエレベータを使ってマンションに降りるようにとのことです。15階のA号談話室だそうです」
 松来は余計なことを言わずに報告する。
 範田は口端を歪めて、斜め上を見上げた。

「これからか」
「これから、現時点からです」
 かわいそうに。
「今日じゃなきゃだめだそうです」
 松来は付け足した。
「把握した」
 残念な気持ちを打ち消すように範田は了承した。

「範田さん、これから御用事ですか。残念ですね」
 笹見が言う。
 どうしてそういうことを言うのか、松来には理解できない。
「はい」
 範田は神妙に頷いた。
「竹成さんを待たせるわけにもいきませんので、お話の続きはまた」
 そして、範田はガックリと肩を落とした。
「範田さん、ここにガックリと肩が落ちてますよ、ほら」
 松来は床から透明の肩を持ち上げ、範田に渡そうとする。
 範田は忌々しそうに松来の手を叩いた。冗談の通じない男だ。

「ええ、本当に残念ですけど、またの機会を楽しみにしています」
 笹見がしれっと言う。恐ろしい女だ。
 しかし、その言葉に範田は救われたような笑みを浮かべた。
「ええ、またの機会に連絡させていただきます」
「は、はい」
 笹見は少し怯みながら、にこやかに頷いた。
「それでは、失礼します」
 範田は笹見に一礼する。

「それと松来」
 松来は急に範田に声をかけられ、背筋が伸びる。
「お前はもう、二度と行軍視察に参加するなよ」
「はあ、その節はお世話になりました」
 松来は間の抜けた返事をする。

「ちなみにお聞きしたいんですが、これからの会合はシークレットですか」
 松来は何気ない口調を装って尋ねる。
 もちろん、竹成と範田が会うことについてだ。
「言いふらすような真似は常識としてやめてもらいたいが、その必要を求められる状況に陥ったなら話してもらってかまわん」
 範田は真面目な表情で答えた。
「そんな恐いこと言わないでくださいよ」

「べつに防衛機密を漏らしたり、守秘義務規定に違反するようなことをしたりしようとしているわけじゃない。なにが機密にあたるのかの指示も受けていないしな。おそらく基本的にはデータベースに記録されていることについて少し詳細に訊かれるだけだろう」
「そうですね」
 今夜だけ通用するロジックだなと松来は思う。

「それにお前、竹成さんに会うように命じたのは他ならぬ、お前だぞ」
「は?」
「だから、俺はお前に言われたから、これから竹成さんに会うんだ。竹成さんは違うのか?」
 範田は目を細めて、うっすらと笑った。
「いえ、これは竹成さんからの指示ですよ」
 松来は内心、やられたと思う。
「俺にはわからん」
「まあ・・・そうかもしれませんね」
 厄介なことにならないよう、松来は漠然と祈る。
 不思議と、祈る対象を自覚せずとも祈ることはできてしまうものだ。おそらく、明確な行為が伴っていないからだろう。厳密には「念じる」といわれるものに近い行為のはずだ。しかし、祈れているのかいないのかなどということに松来は興味がない。ただなんとなく、「ああ、やだやだ」と思っただけだ。

「それでは、笹見さん、今回は本当に楽しかったです。ありがとうございました」
 範田はそれだけ言うと足早に会議室に消えた。
 松来は範田の背中を見送ると笹見に振り向く。
「いま喋っていたこと、わかるな」
「ええ、先輩もよくよく巻き込まれやすいたちですね」
 笹見が他人事のように言った。
「なに言ってるんだ、お前」
 松来は呆れた表情で笹見を見る。
「はい?」
「これはお前のケータイだぞ」
 笹見に携帯電話を差し出す。
「え・・・」

「記録に残るのはお前のケータイだ、ご愁傷様」
「えぇえ!?」
 笹見があわあわと慌てる。
「ど、どうしてあたしのケータイ使うんですか!?」
「おちつけよ」
 松来は携帯電話を笹見に差し出したまま言った。
 腕が疲れるから早く受け取ってほしい。
「あ、そういえば」
 笹見が胸の前でパンと両手を合わせて、花が開くみたいに指を広げた。
「あたしのケータイ、盗難にあってるんです。届出しないと」

「いや、冗談でもやめろよ」
 松来は即座に釘を刺す。
「そんなことして、まかりまちがって通信記録でも調べられてみろ、お前から足がついたらただじゃすまないからな」
 松来に言われてその通りだと思ったのか、笹見は愕然とした表情をする。胸元の花がゆっくりと萎んでいった。
「な、なんでそんなことするんですか! 鬼か悪魔の仕業ですか!?」
「天狗の仕業だな」
 実際には竹成の仕業だ。竹成が鬼で悪魔で天狗だったとしたら二人とも大正解ということになるが、正解だろうと不正解だろうと松来たちの置かれた状況に変わりはない。不正解だったとしても、異形のものしかしそうにないことを人間にされたという顛末に空恐ろしさを感じるだけだ。

「おい、受け取れよ」
「もう・・・それ、あげます」
 べそをかいている笹見の手を掴み、松来は携帯電話を握らせる。
「なに言ってんだお前、それがないと範田さんからの連絡を受けられないだろ。あんなに残念がってたのに」
 松来がふざけた口調で冷やかすと、
「やきもちですか?」
 と言って、笹見が涙目を輝かせながら口角を持ち上げた顔をする。それと同時に、笹見の手のなかの携帯電話は力一杯握りしめられてミシミシと音を立てていた。いろいろな感情が混ざりすぎていて、もうわけがわからなくなっている。
「笑顔が引き攣ってんだよ、お前。ほんとにおっかねえオンナだな」
 松来は強い口調で言いながらも「すみませんでした」というポーズをしながら笹見に頭を下げた。
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# by kourick_yuume | 2011-07-30 00:00 | お話


【残りの日数:354日/放送回数:5018回】

 ちょっとした事件があった。
 対応に追われているため、今日はこれだけ。



【残りの日数:348日/放送回数:5024回】

 ようやく一段落。
 結構日記をさぼってしまった。遡って書こう。

 事件があった日。
 午前中から、片道四時間の大手スーパーに買い物(という名の倉庫漁り)に行っていた、坂本君と綾子ちゃんが、大幅に遅刻して、缶詰と一緒に見知らぬ人を連れて帰ってきた。おまけに、坂本君が腕に怪我をしており、あちこちを血で赤く染めていた。ちょっとしたトラブルがあって、と坂本君が言い訳をするように言ったけれども、ちょっとしたことではないことは明らかだった。

 二人が連れて帰ってきた人は、五十歳くらいの大柄なおじさんで、既に絶命していた。聞けば、スーパーの倉庫に入り込んだとき、先におじさんが缶詰を漁っていたそうだ。そして、いきなり持っていたカッターで二人に襲いかかって来たらしい。特警(特設警備隊)出身である坂本君が怪我を負いつつもなんとか取り押さえたところ、突然動かなくなり、そのまま息を引き取った。そして、遺体を放置出来なかった二人が、そりに乗せて何とか連れ帰ってきた。

 保健室に運んでおじさんの身体を調べたところ、おじさんは全身がひどい凍傷で、足先の指は壊死していた。
「ODだろうな」
 と調べ終わった吉川さんが言った。こういったときの吉川さんは普段のセクハラ親父からはかけ離れる。優秀なお医者さんなのだ。
「オーディーってなんですか」
「オーバードーズ。早い話が薬物の過剰摂取。これだけの凍傷を負いながら、坂本に怪我を負わせるだけ暴れて、頭を打ったわけでもないのに突然動かなくなったんだろ?大体なあ・・・・・」
 吉川さんがサランラップに包まれた不味そうなチョコのようなものと、出来そこないのタバコのようなもの、そして、色々な錠剤を示した。全部、おじさんのポケットから出てきたものだ。
「良くまあこれだけ揃えたよ。強い向精神薬に睡眠薬各種、それに・・・ハシシュか」
「・・・・・・大麻ですか。見るのは初めてです」
「お。知ってはいるのか」
 当たり前だ。
 小さい頃から、タバコやお酒といった嗜好品の延長としてある、大麻を中心としたソフトドラッグの話は延々と聞かされてきた。
「まあ、雪ちゃん世代じゃその辺の話は厳しく仕込まれるか。俺たちが若いころは、そこまで距離が近いものじゃなかったんだがね。しかし・・・・・・」
 吉川さんはサランラップから樹脂を取り出して検分しながら、
「どうしたもんかね」
「何がですか」
「これも一緒にポケットに入っていた」
 吉川さんが見せつけたのは、居住証明書だった。
「・・・地下都市の方ですか」
「そうらしいな。面倒なことにならなきゃいいが」


 それから数日は、雪かきの間を縫って安全確認の作業に追われた。
 私たちの放送は言ってしまえばゲリラ放送だ。電力を初めてとした諸々のエネルギーは自前で賄っているので、人様に迷惑をかけているつもりはないけれど、先日のメールのようにあまり快く思っていない人もいる。結局は亡くなってしまったけれども、このおじさんが私たちのことを地下都市から探りに来た人間である可能性もゼロではないのだ。大麻や酒は、厳しい戦地で兵士に使われる。それこそ、凍傷など気にもかけなくなるように。
 慌ててシフトを組んで、一週間近くかけて敷地の周囲を確認した。その間も当然放送を休むわけにはいかなかったので、ここ数日はみんなしゃかりきに動いた。怪我を負った坂本君にも休んでもらうわけにはいかなかった。

 そして今日、一応の確認作業は終了した。結果として、不審なものは発見されなかった。
「単純に、地下都市から抜け出してきた人だったんでしょうか」
「ま、そう思うしかないだろうね。いつまでも警戒してるわけにもいかないだろ」
 巴婆さんがそう締めくくって、この件は終わりになった。

 仮にそうだとしても、どうも腑に落ちなかった。
 トイソルジャーさんのメールを全面的に信じるわけではないけれども、私も地下都市の居心地は良いものだと信じていた。ましてや、そこから抜け出したがる人がいるとは思わなかった。



【残りの日数:347日/放送回数:5025回】

「昨日で禁酒が解けた!警戒も疲れた!今日の放送も終わった!俺は飲むぞ!」

 吉川さんが叫んだ。
 馬鹿騒ぎとセクハラによった吉川さんの禁酒云々はともかくとして、確かに全員が疲れていたので、お疲れ様会を開くことになった。

「怪我は大丈夫?」
「大丈夫っすよ。抜糸はまだっすけど、五針くらいでしたから」
 坂本君の怪我は大したことはなく、順調に回復していた。
「綾子ちゃんをかばったんだから、名誉の負傷だよ」
「いや、んなことないっすよ。むしろ逆で・・・」
「は?」
 聞けば綾子ちゃんは、おじさんがカッターを取り出した時点で、真っ先に缶詰をいっぱいに入れた袋を振りかぶっていたらしい。それをみた坂本君が慌てておじさんと取っ組みあったらしい。
「・・・綾子ちゃん、無事で良かったは良かったんだけど、怖がるとかしたら?女の子的に」
「なに、うちがカッターで切られたほうが良かった言うん?」
「いや、もちろんそんなことはないけど」
「あんなとこで死ぬわけにいかんやろ」
 綾子ちゃんはたくましい。年下だけど、私よりよほどしっかりしている。
 カッターを取り出された時点で、私だったらたぶん逃げるだろうなあ。

「・・・・・・東京湾にある地下都市の居住証ですね」
 おじさんが持っていた居住証の話になり、それを見た和田君が言った。
 彼は地下都市建設のアルバイトをしていたのだ。
「和田君はここの建設もやっていたの?」
「いえ、僕は違います。あそこは国主導で建設されたので、バイトの募集はしてなかったんです。僕は民間のところですね」
 東京にはいくつも地下都市がある。国によって建設されたものの他にも、企業やお金持ちの個人、怪しいところだと宗教なんかが建設したものもある。
「・・・私、地下都市から進んで抜け出す人がいるとは思ってなかった」
「僕もですよ。僕が建設に携わった都市も、娯楽や居心地の面といったところは建設初期の段階からかなり重要な項目として挙げられていましたから」
「犀川製薬が建設した都市な。この近くにある。結構な設備やもんね」
「綾子ちゃん、詳しいの?」
「・・・岡田さんとは、結構地下都市の話をするんですよ」
「そ、そうやね」
「・・・へ~え」
 私がにやにやしていたら、肘鉄を脇腹に食らった。
 綾子ちゃんはたくましいのだ。

 結局、明け方まで騒ぎ、久しぶりに飲んだ吉川さんの裸踊り(最悪)が出たところでお開きになった。
 片づけを巴婆さんと一緒にやった。
「・・・大丈夫ですかね」
「まだ心配してるのかい?」
「・・・・・・私がここに来てからは初めてのことでしたから」
「まあ、めったにあることではないね」
「巴婆さんは心配じゃないんですか?」
 巴婆さんはゆっくりと微笑んで言った。
「外のことを心配してもどうにもならないさ。私たちは外の人間ではないからね。ただ、今回あいつら二人が死んでしまったやつをその場に放っておけず、ここまで連れ帰ってきただろ?倍の八時間をかけて。そっちのことのほうが、むしろ喜ばしいけれどね」
「・・・・・・」
 私は、巴婆さんを見つめざるを得なかった。
 そして、そのことを指摘されるまぜ気づかなかったことを恥じてから、嬉しくなった。
「そうですね。私たちはそのためにいるんですものね」
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# by kourick_yuume | 2011-07-29 18:41 | お話
 午後11時12分、執務室のドアはノックされた。

「どうぞ」
 応接用のソファに座っていた梅永はふかしていた葉巻を左手に持ち替えながら応じた。天井の照明は消されており、ソファの脇に置かれた蓄電式のスタンドライトだけがぼんやりと部屋をオレンジ色に染めていた。

「失礼します」
 落ち着き払った声とともに長身の男が一人、部屋に入る。
「遅くなりました」
 秘書の竹成はドアを閉めると知事に会釈した。朝から動きまわっていたはずなのだが、スーツや頭髪に乱れはなく、疲れをうかがわせない。ほっそりしている見かけとは裏腹にタフさを感じさせた。その身なりと言動から「固い」と評されることの多い竹成だったが、梅永はむしろ「飄々としている」と思うことが多かった。いずれにせよ、使える男ではある。

「いや、こちらから頼んでいたことだからね」
 梅永は葉巻を右手に持ち替え、左手で竹成にソファを勧めた。
「まあ、正直、少々、待ちくたびれてはいたことは否定できないが」
 梅永がおどけた調子で言うと、
「申し訳ありませんでした」
 竹成は梅永の言葉尻を食い気味に言った。コートハンガーに上着とマフラー、そしてヘルメットをかけると、竹成はソファに歩み寄る。

「外は寒かったろう」
 場を和ませるために梅永は当たり前のことを訊いた。
「ふぶいていたので地下搬送路を使わせていただきました」
 この場合の地下搬送路というのは、地下鉄網や民生の地下通路ではなく、重要施設間を地下で結んでいる特別経路だ。物資の搬送のほか、要人の避難、及び、緊急時のバンカーとしても使われる。
「地下だって寒い」
「はい、なので、搬送車を一台借り、ここまで乗ってきました」
 竹成はしれっと言う。
「君もなかなか大胆なことをするね」
 梅永は笑った。
「お待たせしてはいけないと思いまして」

 竹成はソファに腰かけ、黒革のブリーフケースを足許に置いた。直線的なデザインの眼鏡のレンズがときおり白い光を反射する。竹成の眼鏡が汚れているのを梅永は見たことがない。
 無駄のない所作で話す準備を整える無表情の竹成を見ながら、「まったく固い男だな」と梅永は思った。

「暗いですね」
 竹成がスタンドライトに視線をやる。
「必要かい?」
 梅永は天井を指差しながら言う。別に電源が落ちているわけではなく、スタンドライトを使用しているのは梅永の趣味だといえた。節電にもなる。
「いえ、十分です」
 竹成は言う。そして、ブリーフケースからダブルクリップでまとめられた紙束を3冊取り出し、テーブルの上に置いた。

「提出される資料はすべてコピーしてきたので、明日にでも目を通してください。言うまでもありませんが、取り扱いは慎重にお願いいたします」
「もちろん」
 梅永は頷いた。提出される資料とは、今夕、北方観測隊が持ち帰ったものだ。おそらく環境省を経由して、明日には首相のデスクに置かれるだろう。その資料を竹成に入手してもらっていたのだ。どのような手段を使ったのかはわからないが、市ヶ谷に入る前にデータの受け渡しがあったのではないかと梅永は推測する。

「また、数名の隊員から話を訊いてきました」
「それは御苦労だったね」
 梅永は「それで遅かったのか」と思う。
「明日以降ですと情報に欠落が生じる可能性がありますから」
「なかなか良い表現だ」
 梅永はにやりと笑う。
 竹成が続けて話をしようとしたので、梅永はそれを片手で制した。

「なにか飲まないか」
 梅永はふかしていた葉巻を灰皿で潰し、立ち上がりながら言う。
「なにかといっても、水かバーボンかバーボンの水割りの三択しかないが」
 梅永は竹成にちらと視線をやって肩を竦めた。竹成は「正確には水のバーボン割りを含めた四択だな」と頭の片隅で思ったが、口には出さなかった。当たり前である。
「ここで、ですか?」
 竹成は周囲を見回して「いかがなものか」というジェスチャをする。冷静になって考えると現在のこの部屋ほどアルコールを飲むのに適した環境はないような気もしたが、紛いなりにも「執務室」と名の付けられた部屋でアルコールを摂取することには抵抗があった。もっともな反応だろう。

「強要はしないよ。別の場所に移ってもいいが、いまとなってはあまり意味のない行為だと私は思うね」
 梅永はデスクの下からバーボンの瓶とグラスを取り出した。
「これからここに人がいらっしゃる予定は?」
「夜の11時に? わたしは健全な知事だよ」
 梅永はグラスにバーボンを注ぐ。
 健全な知事は執務室で酒を飲んだりはしない。
「明日のご予定は?」
「それは重要な質問だ」
 梅永はグラスを持ち上げながら、竹成を見た。
「飲みながら話そう」
 一口飲む。
「じゃあ、ストレートでお願いします」
 竹成は笑みを浮かべて言った。

「いけるじゃないか」
 梅永は嬉しくなる。
「氷はないが、ミストにしたかったらいまのうちにそとから雪玉を持ってきたらいい」
 子どもみたいにうきうきした口調だった。
 竹成は「雪は汚いだろう」と思ったが、もちろん、口には出さなかった。
「4センチくらいでいいかな。だいたい、半分だ」
 梅永はグラスにアルコールを注ぎながら言う。
「4センチ?」
 竹成は量を長さで示されたので驚いた。
「重さでいったほうがいいかな? 私が若いころはシングルのことをワンフィンガーといったが、指の太さは人それぞれだし、どの指を使うかでも異なる。バーテンダーが赤ん坊だったら絶望的だ」

「シングルは1オンスです」
 竹成が指摘する。
「オンスという単位がそもそもわからないじゃないか、日本人には馴染みがない。アメリカ人とイギリス人以外はきっと、みんなそう言う」
 梅永が楽しそうに言い返した。
「1オンスは約30ミリリットルですね」
「君は30ミリリットルの酒を想像できるかい。どういう器に想像する? 私は若いころにシングルのロックを頼んで、その少なさに驚いたものだよ。馬鹿にしているのかと思って続けざまに飲み干し、そして、悪酔いした。私には多かったんだ。物事を見た目で判断してはいけないということを、私は人間よりもさきに酒から学んだね」

 梅永はグラスを持ち上げて、竹成に見せた。
「このグラス」
「オールド・ファッションドですね」
 竹成は答える。
「まあ、ちょっとした柄は付いているが、国内では標準的な単なる8オンス・タンブラーだよ。その名の通り、だいたい240ミリリットルの容積がある。4センチだとだいたい半分、つまり、120ミリリットルだ」
 梅永は言いながら、両手にグラスを持ってソファに戻った。
「君、体重は70キロくらいだろう? 身長は180センチくらいかな」
「ええ、だいたい、そのくらいです」
 竹成は頷く。
 梅永はソファに座ると、グラスをテーブルに置いた。

「ということは、君が平均的な酒の飲める日本人だと仮定して、1時間あたりに7グラムかもうちょっとのアルコールを分解する能力を有していることになる。もっとも、モンゴロイドは統計上、約50パーセントは下戸なんだが」
 梅永は竹成の前にグラスを進めた。
「そのバーボンは50度だから、概算して60グラムはアルコールだと思っていい。君がそれを飲み干したとして、分解し終わるのは約9時間後だ」
 梅永は自分のグラスに口を付ける。
「いただきます」
 竹成もグラスを手に取り、一口飲む。こういった計算は自分もよくするところのものだったが、梅永の語り口は手品の種明かしを聞いているように興味深いものだった。酒が手品だとしたら、アルコールはその仕掛けに値するだろう。トロイの木馬のようなものである。

「要するに、だ」
 梅永はじっと竹成を見据えた。
「急にですまないが、君には明朝10時、北海道に行ってもらいたい」
「了解しました」
 竹成は梅永の視線の重圧を逸らすように簡単に首肯した。
 途中から、こういった展開になるような気はしていた。
 慣れっこなのだ。
「ハシシュの件ですか」
「それもある」
 近年、雪下都市では出所不明の大麻が横行しだしており、それに伴う風紀の乱れが問題視され、治安の悪化も懸念されていた。最初は個人による栽培だろうと都市内部の調査が進められていたが、次第に外部からのものであることがわかり、特設警備による内偵が進められていた。企業都市群からの搬送物を臨検しても結果は出なかったので、梅永は自衛隊の関与まで疑っていた。

「松来と会ったんですね? 彼には待っているように言ったんですが」
 松来とは北方観測隊に従軍していた都職員だ。竹成が47歳なのに対し、松来は37歳で一回りほどの歳の差しかなかったが、竹成は初めて松来に会ったとき、リクルート中の学生と間違った。竹成が老成しているということもあったが、松来は年を経ても溌剌とした若さを維持していた。
「そそくさと帰ったよ。彼は面白いね」
「変わった男です」
 竹成は眉を顰めながら言う。

「ただ、見てきてほしいのは、それだけじゃない」
 梅永はグラスを持つ右手の人差し指を立てた。
「さきにルートを教えてもらっていいですか」
 竹成はすでに具体的な行程と手段を検討し始めていた。
「まず、旭川に入ってほしい。そこから稚内に行き、旭川に戻ったあと、帯広、根室は見てきてもらいたいね。期間は君に任せるが、一ヶ月はかかりすぎだ」
「はい」
「表向きの名目は自然エネルギー資源の活用方法の視察にしてある。実際、それはそれで気になる情報だ。予定外の動きをことさら隠す必要はないが、その分、十分な警護体制はとれないだろうから身の安全には気を付けるように」
「わかりました」
 たしかに、身内も疑いながらの視察ということになると、ちょっと危ない橋を渡らなければならない場面は想定しうる。直接的な危害は加えられなかったとしても、移動の際にほんのちょっと燃料や食料が「不足」しただけで「遭難」しかねない。

「それと、マツライ君によるとオロロンラインの風車群の一部、特に北部のものが凍結し始めているそうだ」
 松来は「マツキ」と読むが、松木という職員がほかにいたので、梅永は松来のことを「マツライ」と呼んでいた。
「風力ベースの町から難民が発生する可能性がある」
「ええ、そうですね」
 竹成もそのことは知っていた。
「第2師団も地上難民の武装化を警戒しているようです」
「あのあたりはもともとロシアや半島からの難民が多いからな」
 梅永は苦笑して言う。
「ただ、武装化もさることながら、その武装がどこからやってくるのかが問題だ。君にはハシシュやハードドラッグのこともだが、そういった一連の北方の動きについても情報をまとめてきてもらいたい」
 竹成は黙って頷いた。

「はっきりいうと、ドラッグよりも、それを捌ける集団の組織、その規模、目的、ネットワーク、流通経路、そして、今後の展開が問題だ。他愛のない集団ならいいが、まかり間違って、もしいま東京に武器でも持ち込まれたらひとたまりもないからね」
 梅永はバーボンを飲み干し、ソファから立ち上がる。
「むろん、防衛省や他の職員にも働いてもらっているが、私は確度の高い情報と信頼できる分析が独自に欲しい。自衛隊の嵯峨さんには話を通してあるから、なにかあったら便宜を図ってもらうといい。期待している」
「心得ました」
 竹成は再三、頷いた。

「さて、事務的な連絡も終わったところで、私はもう一杯もらおう」
 梅永はグラスにバーボンを注いだ。
 竹成は「事務連絡ではないな」と思ったが、口には出さなかった。
「そろそろ君の話を聞きたいね」
「はあ」
 話すべきことは複数あったはずだが、竹成は明日以降の計画に気を取られていた。なんとなしに間の抜けた返事をしたことに竹成は「しまった」と思うが、頭のなかのホワイトボードに覆いを被せることにも手間取ってしまう。少し酔いがまわってきたのかもしれない。竹成はブリーフケースから手帳を取り出そうとする。
「ああ、そうだ」
 梅永が楽しいことを思い出したみたいに声を上げた。
 竹成は嫌な予感がした。
 梅永と関わって、こういうときにろくなことが起きたためしがない。

「酒のツマミがなかったね、ちょうどいいのがあるんだ」
 そう言って、梅永はデスクから白い皿を持ってソファに戻ってくる。梅永のグラスには竹成のグラスに残っているのとほぼ同量のバーボンが注がれていた。梅永はテーブルの上に皿を置くと「まあ、食べなさい」と言った。皿の上には緑色のブロックとスナックが乗っていた。
「こちらはクロレラブロックですね。わたしも以前、試供にもらったことがあります」
 竹成は緑のブロックを指差しながら言った。
「へえ、そんなことがあったのか。私は知らなかった」
 梅永は少し驚いた。食糧の検討は竹成ともしていたが、こういったものがあることは聞いていなかった。

「ただ、そのときにもらったものとは多少、違うようですね」
「いくつかのフレーバーがあるそうだ」
「どうされたんですか、これは?」
「ああ、マツライ君からもらったんだよ」
 梅永は緑色のスナックをひとかけら口に運ぶ。
「君も食べてみたらどうだい」
 梅永に促されて、竹成はスナックを食べる。
「やや青臭いものの塩味が効いていますね」
「これはまだ試作段階の貴重品だそうだ」
 梅永は手に取ったスナックをしげしげと眺めると皿に戻した。

「クロレラも検討しているんですか?」
 竹成は訊いた。もちろん「食糧として」ということだ。
「あ、それ、クロレラじゃないよ」
 梅永は笑いを噛み殺しながら言う。
「え? 違うんですか」
 竹成はもう一度スナックを口に運び、よく味わう。
 ブロックと同様に、スナックも当然、クロレラだと思っていた。
「それはね、ユーグレナだよ、ユーグレナ、知らない?」
「知りませんね」
 竹成は右に5度、首を傾げる。
「ミドリムシ」
 梅永はにたりとした笑みを浮かべた。
 竹成は食べていたスナックを吹き出し、咳き込んだ。

「君ぃ、それが食べられないようじゃ、これからの時代、生きていけないぞ」
 梅永は竹成の様子を見ながら、グラスに口を付けた。
「なんといっても、森の女神が作ったらしいからな」
「なんですって?」
 竹成はむせながら訊き返した。
 非現実的な発言だ。立場的には危険と言ってもいい。
 梅永の発言の意図を把握しておく必要性を竹成は感じた。
「マツライ君によると実在するらしい」
 梅永はおどけた口調で言う。
「森の女神が、ですか?」
 竹成はグラスに残っていたバーボンを一気に飲み干す。
「そう。森といっても、地名の森だが」
 どうやら冗談を言っていることはわかった。
「北海道の人間なら、誰でも知っているそうだ」

 まさか。竹成は半信半疑だった。冗談なのはわかったとしても、それほど北海道の人間に慕われている人物であれば、自分の耳に入らないわけがない。竹成は少なからず自分の情報網に自信を持っていたが、少なくとも「森の女神」について竹成の人脈から漏れ伝わってくるものはなかった。あまり信憑性も重要性もあるような情報ではないのだろうが、しかし、なんとも松来らしい情報だと竹成は思った。おそらく、情報に対するアプローチに差があるのだ。

「気になるようなら寄ってきたらどうだい」
 梅永は言う。
「森ですか、たしか地熱ベースの町ですね」
 確認はするものの竹成にその気はない。
「私も実在する女神に会ってみたいものだね」
「はあ」
 竹成は溜息を吐いた。

 というのも、巧妙に隠しているつもりではあったが、竹成は大の虫嫌いだった。もはや遺伝子に組み込まれているのではないかと思われるような生理的なおぞましさを感じるのだ。実体は無論のこと嫌いだったが、すでに「ムシ」という語感だけで脳の末端が痺れる程度にはアンタッチャブルだった。

 竹成にとって、クロレラはぎりぎり植物サイドだがミドリムシはきっぱり動物サイド、クロレラは緑藻だがミドリムシは原生動物だ。もちろん、ミドリムシが虫ではないことはわかってはいたものの、その名に「ムシ」を宿している以上、それに拒否感を抱かないことは竹成には不可能だった。

 どのように高貴な人物がいるのか知らないが、竹成にとってミドリムシを培養するに飽き足らず、それを人間に食べさせようとするような人物が女神であるはずはない。むしろ、ダークサイドの住人に違いないだろう。いうなれば、魔女である。グツグツと蟲の沸き立つ大釜から緑色のスナックを取り出している女性の高笑いが竹成の脳裏に響き渡った。

 その想像のバカバカしさとおぞましさに竹成は頭を抱えた。
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# by kourick_yuume | 2011-07-20 00:00 | お話


【残りの日数:359日/放送回数:5013回】

 本日はホワイトアウト。
 東京は相変わらず一月のうち十日はこうで、十日は穏やかな降雪、残りは曇天、そして一日くらい太陽が気まぐれに覗くという天気が続いている。

 ホワイトアウトになると、当然外出禁止になる。すると百以上ある体育館へ移動できなくなってしまうため、いつもの確認作業に入れなくなる。おまけに、雪かきも出来ない。

 暇を持て余している様子が漂ってしまうと、また吉川さんが「気分転換に飲み食いして騒ごう」と言い出してしまう可能性があるので(今は禁酒の刑が執行中だけれど)、ラジオの新コーナーを全員で考える会議が開かれた。

 今あるコーナーは、
・フリートーク
・東京の状況報告
・各地の常識(リスナーさんから募集)
・メンバー一問一答(リスナーさんから募集)
・告白致します
・かつてはよかった
・曲(巴婆さんの音楽データより)
・確認作業報告
・明日の目標

 の九個。

 問題になったのはやっぱり「告白致します」のコーナー。
 先々週から始まったこのコーナーは、ジングルを流してそれが終わる頃にメンバーの誰か一人が、マイクに向かって何かを告白するというもので、第一回目に坂本君が「三橋さんのエクレアを食べたのは俺です」と告白し、好物を食べられた私が思わず「あんた何してくれてんの!?」と激怒してしまい(甘味は貴重品なのだ)、それがマイクにのってしまい、番組後に「癒し系だと思っていたのにショックです」というメールが届き、それを見てまた私が坂本君の首を絞めたときから、暗雲が立ち込めていたコーナーであった。
 最近では吉川さんや綾子ちゃんが悪ノリして、コーナーを面白くするためにわざと私の下着を隠したり和田君の顔に寝ている間にいたずら書きしたりする暴挙によくでるため、私の中で存在意義が揺らいでいた。

 というか下着を隠した吉川さんに腹が立っていた。

「いや誤解だよ、リスナーさんに楽しんでもらうために必要なことなんだよ」
「だからって下着を隠すことないじゃないですか」
「ところで雪ちゃん。ベージュはいくらなんでも婆くさいと思うんだ。18歳だろ」

 うるさいよ。
 会議は紛糾に紛糾し、最終的に、セクハラはもうしないと吉川さんに誓わせ、コーナーは現状維持になった。下着の数だって限られているのだ。色なぞ気にしている場合じゃない。


 会議後、放送の前に巴婆さんと井戸端モード。
 昨日の曲について聞きたいことがあったのだ。歌詞の途中にあった、「自分らしく生きることなど何の意味もないような朝焼け」という部分が気になっていた。

「朝焼けって、夕焼けの朝バージョンですよね」
「そうだよ」
「私、両方とも見たことないんですよ。夕焼けは全体的にオレンジで、朝焼けはそれが青に抜けるような色だって聞いたことがあるんですけど」
「朝焼けはピンクに見えることもあるけどね。夕焼けの中には、一瞬だけ緑に光るものもあるんだ」
「え、緑ですか?」
「グリーンフラッシュって言ってね。まあ滅多に見られるもんじゃないけど。見ることが出来たら、願いが叶うって言われてる」

 巴婆さん何でも知っているのだ。

「朝焼けって、せつないものだったんですか?」
「なんでだい」
「いや、自分らしく生きることなど何の意味もないような、って」
「ああ、それはね・・・。何て言ったらいいかな」

 巴婆さんは何故か苦笑していた。

「やらなきゃいけないことがたくさんある今はあまり聞かれなくなってしまったけど、昔、モラトリアムって言葉がもてはやされていた時期があったんだよ。まだこの国が裕福に退屈して、戦争を他人事のニュースとして聞いて、当然夕焼けや朝焼けとかの綺麗な景色もあって。それでも自分は不幸を抱えているっていう顔をした人間が多かったときだ」
「・・・贅沢に聞こえるんですけど」
「その通りだよ。贅沢だった。やれることの選択肢が無限に広がっていることを、国やメディアも美徳としていた。だけど、それをそのまま美徳として受け止めてしまった人間の中で、自分にやれることがわからないやつらが増えてね。自分探しっていう単語が蔓延した。その代名詞だ、モラトリアムって言葉は」
「・・・はあ」
「まあ、個人的にはそれに対するわずかな皮肉と救済だと思っているよ、この歌のこの歌詞はね」
「・・・巴婆さんもモラトリアムだったんですか?」

 しばらくしてから、巴婆さんは「そうだったんだろうね」と言った。
 気のせいかもしれないけれど、ほんのわずかに苦しそうだった。

 モラトリアム。
 お菓子か何かのメーカーにしか聞こえないけどな。



【残りの日数:358日/放送回数:5014回】

 本日は、太陽がのぞいた。
 まだ地上にいる方々の間では、太陽が見えたお祝いに一杯やる人が多いみたいだけれども、私たちはそうはいかない。少しでも天候がましなうちに、まだたどりつけていない体育館への道筋を確保しなければいけなかった。

 現在は、86番目の体育館から87番目への体育館への道のりを掘削中。
 太陽が見えたおかげか、何とか入り口付近までたどり着くことが出来た。

 そういえば、確認作業が終了した3番目から84番目の体育館は今どうなっているだろうか。
 片っ端から雪が降るので、確認作業が終了するとその体育館までの道のりは放棄してしまうのだ。80番目くらいまではまだなんとなく道がついているけれども、それ以前になると地図を見ないとどこにあるかすらわからない。

 本日のMVPは電熱融雪機「メルト十火水」君。(めるととかす、と読む。命名は例によって綾子ちゃん。正直、綾子ちゃんのセンスはどうかと思う)
 小さな体を健気に動かし(まあ、自動車くらいはあるけれど)、もりもりと掘り進んでくれた。
 運転とメンテナンスを引き受けてくれている和田君の鼻も高い。

「いや、僕はそんなたいしたことないですよ」

 謙遜振りは相変わらず。
 だけど、地下都市建設のアルバイトをしていた彼の技術屋ぶりは本物なのだ。



【残りの日数:357日/放送回数:5015回】

「視聴覚室でエロビデオ見たん誰!?」

 朝から綾子ちゃんの怒声が響き渡った。
 朝の学校周りの雪かき(今週は綾子ちゃんが担当)で疲れて帰ってきて、巴婆さんが作ってくれた朝ごはんを肴に映画を観ようと視聴覚室に行って、機器のボタンをオンにしたところ、どうやら破廉恥なものがスクリーンに大写しになり、「うっぎゃー!」と叫んだらしい。

 当然犯人は吉川さん。
「しょ、証拠でもあるのかね!」と言い張っていたけれども、綾子ちゃんが「あの巨乳もん見るのは吉川さんしかおらん!」と怒鳴り返したところ、「・・・すいませんでした」と自白。禁酒が更に一週間伸びた。


 雪かきと確認作業から帰ってきて、放送までの間、まだ不機嫌が収まらなかった綾子ちゃんとガールズトーク。

「最っ悪。前見てた映画、続き見ようと入れっぱなしにしておいたから、次どっから見たらわからんよーになった」
「今なに観てんの?」
「オリバー・ツイスト」
「・・・観たことない」
「雪ちゃんも映画観たら?なんかいっつも外見てボーっとしとるけど」

 そんなつもりはないのだけれど、そう言われることが多い。

「ってーかそんなに胸の大きい子が好きなんかな」
「人によると思うけど。吉川さんはたまたまそうなんじゃない?」
「・・・そうかな。好きな人多いって聞くけど」

 綾子ちゃんは自分のスタイルを気にしているのだ。
 何回も風呂に一緒に入っているけど、確かに、大きくはない。

「大丈夫だって。和田君は気にしないよ、そんなこと」
「な、なんで和田君の話になるんよ」
「え・・・」

 ばれていないとでも思っていたのか、この子は。

「ええ!?うっそぉ?そ、そんなわかりやすい、うち」
「だって・・・」

 技術担当の和田君の手伝いをかって出たのも綾子ちゃんだったし、好きなタイプ聞いたら「真面目な人」って返って来るし、というかそもそも視線が違うではないか。

「い、言わんといてな」

 もうばれてると思うけどなあ・・・。
 しかも全員に。



【残りの日数:356日/放送回数:5016回】

 坂本君が酔っ払った。

「ちょっと三橋さん聞ーてくっさいよ!」
 ・・・聞いてるよ。
「さっきね、吉川さんと飲んでたんすよ!」
 だろうね。既に酒臭いもんね。
「俺はもっとこのラジオ盛り上げたいんすよ!このラジオは地上に残っている人の希望なんすよ!」
 そ、そうなの?
「そーっすよ!俺、このラジオ初めて聞いたとき、感動したんすから。三橋さん、いい声っしたよ」
 それはどうも。
「ああ、まだこうやって残って頑張っている人がいる。俺も手伝えたらって思って・・・!」
 駐屯基地から抜け出してきたんでしょ。
「そーっす!よく知ってますね!?」
 ・・・まあ十回くらいは聞いたからね。
「結構、自分なりには必死の覚悟だったんす。色々ありましたら」
 うん。知ってる。かなり知ってる。
「でね!このラジオは地上に残っている人の希望なんす!」
 ・・・はい。
「だから、もっといろんな人に聞いてもらうために、もっと努力するべきだと思うんすよ!」
 まあ、リスナーさんが増えてくれたほうが私も嬉しいけど。
「でしょ!?なのに!なのにですよ?吉川さん、水をがぶ飲みするんすよ!」
 は?
「俺だけ飲んでるのが気に入らなかったみたいで!やってられるかとか言いながら、水をがぶ飲みするんすよ!」
 ・・・うん。
「水は大事っすよ!作るの大変じゃないっすか!材料は無限とはいえ!」
 ・・・そうだね。
「なのに、がぶ飲みするんすよ~。わかってくれないんですよ~」
 な、泣いてるの?
「・・・三橋さん」
 ・・・なに?
「俺、何で坂本君なんすか?」
 ・・・・・・
「俺、二十歳っす。三橋さん、年下っすよね? 岡田さんもっすけど」
 ・・・あれ、気にさわった?
「いや、いいんす。坂本君はいいんす。でも、なんで坂本君なんすか?」
 去年、坂本君が来たときに、下っ端でいいっす、呼び捨てにして下さいって言って。
「・・・・・・」
 それじゃあちょっとあんまりだってことで、坂本君に。
「・・・・・・」
 ・・・坂本君?
「三橋さん」
 ・・・はい。
「聞ーてくっさいよ!吉川さん、水をがぶ飲みするんすよお!」

 開放されたのは午前三時過ぎ。
 ・・・眠たい。



【残りの日数:355日/放送回数:5017回】

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

 以上、確認作業報告でした。

 さて、本日の放送はいかがでしたでしょうか。
 最後に一通、メールを紹介させてください。

 はじめましての方なのですが。
 えー、東京都のトイソルジャーさん。

 三橋さん、はじめまして。はじめまして。
 初めてメールします、トイソルジャーと申します。
 実は、自分は先月まで仕事の関係で東京の地下都市にいました。

 地下の生活は相変わらずで、みながやる気に満ち溢れています。
 敷地や娯楽、食料など全てが満足のいくほどあるわけではありませんが、それを確保しようとみなが全力を尽くしています。

 このラジオのことは地下でも噂になっていたので存在自体は知っていました。
 ただ、地下では誰もこのラジオを聞いていませんでした。
 このアドレスは、地上に出て、仕事の知り合いから聞いて知りました。

 率直に申し上げますが、皆さんは地下に来る気はないのでしょうか?
 申請すれば居住許可は無事に通ると思いますし、自衛隊や民間の移送企業も動いてくれると思います。

 皆さんがやっていることが無駄だとは思いませんが、電気その他のエネルギーもいずれは尽きるでしょう。
 気を悪くされたら、すいません。
 ただ、いたずらに自分たちの状況を悪くされているような気がしましたので、このようなメールを出させていただきました。
 では、失礼致します。


 と、言うことで。
 まず、トイソルジャーさん、メールをありがとうございました。
 
 えー結論から先に申しますと、地下に移る気は、ありません。
 少なくとも、今の確認作業が終わるまでは。

 世界がおかしくなってから、この放送は始まりました。
 始まった当時、私は小学校に入る以前でしたが、この放送のことは知っていました。両親が毎日このラジオに耳を傾けていたので、私もそれに倣ったんです。
 というより、当時はこの放送のことを知らなかった人はいないと思います。

 いわゆる大規模疎開が始まって、私は両親と離れて九州に移りました。
 そのときに、この放送を聞かなくなってしまったのですが、高校生になって両親の死を知らされ東京に戻ってきたとき、この放送は続いていました。そのとき、何となく安心したことを覚えています。
 パーソナリティも変わり、放送の形態も昔のようではありませんでしたが、ただ続いていたことに安心したのです。

 なんか、上手くいえませんが。
 今はとにかく、この放送を続けていたいのです。
 地下に行かれた方々を非難する気はまったくありません。
 地下に移ったほうが安全だということも分かっています。
 ただ、今はとにかく放送を続けたいと思います。

 トイソルジャーさん、ようこそ私たちの放送に。
 是非、気の向いたときにでよいので、聴いてやってくださいね。


 では、お別れのお時間です。

 Left Scarecrowsの All Night World

 この放送は、吉川健吾、巴婆さん、和田剛、岡田綾子、坂本洋介、三橋雪の提供で、東京は三鷹市にあります、三鷹市立第三中学校からお送り致しました。

 では、本日最後の曲です。
 巴婆さんの音楽データより、Simple Plan で。
 Crazy

 一時間のお相手は、三橋雪でした。

 地下にもぐらず、未だに地上にいらっしゃる同志の方々。
 必ず、また明日。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

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# by kourick_yuume | 2011-07-15 11:14 | お話
 交互に物語を書こう。リレイ小説、リレイ小説だ!
 男たちは、はしゃいでいた。

 あとは任せた、と連絡した二日後。
 香陸さんから投稿があった。

「・・・・・・」

 地球がなにやらエライことになっていた。
 どうやらどんどん気温が下がっているらしい。

 しかも、色んな国が喧嘩しているようだ。
 地名がいっぱいでてきた。

 キャラクターも増えた。
 ふぶきにサクラ。

 まさか「吹雪だるま」を拾うとは思わなかった。
 駄目だ、油断も隙もない。

 僕は慌てた。
 skype にて連絡。

「由芽さん、皆殺しにするつもりでしょう」

 ばれていた。
 365日を、命のカウントダウンにするつもりだった。

「僕は、生き残らせますよ」

 最初、えー、と思った。
 もう隕石とか落とそうよ、と言って却下された。

 却下されるのが小気味良かった。
 僕も香陸さんの意見を却下したりした。

 ちゃんと、会議にはなっているな、と思った。
 否定と代替案の応酬がないと会議じゃない。

 そして、話していくうちに、疑問に思った。
 何故自分は皆殺しにこだわっているのか。

 別に、いいんじゃあないの?
 生き残ったって、いいじゃあないか。

 僕は意見を変えた。
 成長したのだ。

「じゃあ、日数は別のカウントダウンにしよう」

 そして、またもアイデアの応酬。
 色々飛び交う。

 確かに面白そうな意見が出た。
 けれど、まとめるのが大変そうだ。

「まあ、次は由芽さんだからね」

 彼を甘く見ていた。
 油断も隙もない。

 skype 終了。
 日常に回帰。

 後日、香陸さんに連絡。
 今忙しいから、続きを考えてくれてもいいよ、と。

 返信が来る。
  ヽ(*゚д゚)ノ <ドウシヨッカイナー!

 馬鹿にされた、と思った。
 絶対考えないなこの人、と思った。

 しかし、昨日の投稿。
 目を疑った。

「しかし、わたしは考えた」

 甘く見ていた。
 また会議をする。
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# by kourick_yuume | 2011-07-13 00:00 | 相談
 交互に物語を書こう。リレイ小説、リレイ小説だ!
 男たちは、はしゃいでいた。

「じゃあ、まずはボクがテキトーになにか書きますよ」

 そんなことを由芽さんが言った。
 ギョーカイの人は違うな、と僕は思った。

 そして、投稿されるテキスト。
 読む。

『あ、この男、登場人物を皆殺しにするつもりだ』

 僕は思った。
 そして、ケータイにメール。

「あとは任せた」

 テーマも決めずに始まったストーリィ。
 続きは僕に託された。

「これ設定は勝手に作っていいの?」

 僕は訊いた。
 返信。

「お好きに」

 思ったこと。

「やらせはせん、やらせはせんぞ!!」

 生き残らせよう。
 僕は決意する。

 設定を考える。
 与えられた条件。

【地球、とっても寒い】
【13年前、もう、絶望的な状況】

 仕方ないから、20年前から毎年1度、気温を低下させる。
 天変地異にも、ほどがある。

 原因も幾つか考えたのだけれど、
 ファンタジィかSFかは保留にしたかったので書かない。

 お好きにというので、けっこうガッチリ固めたった。
 ここから皆殺しにするのは、かなりの力技が必要だ。

 使うキャラは「吹雪だるま」っきゃないので、
 名前はそのまま「ふぶき」にする。

【女性】

 やはり女性がいい。
 男性だと、けっこうハードだ。

 三橋君が30代っぽいので、こっちも30代にする。
 けど、あとからきいたら、三橋君、ティーンエイジャだった。

【37歳】

 自衛官と研究者で悩むも、研究者ということにする。
 世界観を説明するのに、そっちのほうが楽だった。

 誰か話し相手が欲しい。
 桜吹雪か花吹雪。サクラっきゃない。

 妄想が加速する。
 はっと我に返ると、百合の花が咲いていた。 

「僕は楽しかったが、このあと、大変だと思う」

 そりゃそうだ、このあとどうするっていうのだ。僕だっていやだ。
 メールを送る。

「Skype れ」

 返信。質疑応答。
 そして、雑談。

「隕石を落とそう」
「却下」

 たしかに、このあとどうなるのだろう、想像がつかない。 
 けど、次、僕じゃないしな。

 はっきり言って、僕はもう、これで終わってもいいのだ。
 そして、昨日。

「いま忙しいから、続き、考えといたらいいんでない?」

 ヽ(*゚д゚)ノ < ドウシヨッカイナー!

 しかし、わたしは考えた。
 考えたぞ。
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# by kourick_yuume | 2011-07-12 00:00 | 相談
 先日、職場の打ち合わせにて。
 全員が疲れていたのか、「どうしたら子どもに効果的に絶望を与えられるか」という話題で盛り上がりました。諸説乱立しましたが、最終的に現在の自分がタイムスリップして子どもの自分に会いに行って、「私は未来のあなたですよ」と告げることが最も効果的だという結論になりました。

 愛が欲しくなりました。


 愛を下さい。ZOO。
 やっぱり何回考えても、この歌の歌詞の「遠慮しすぎのメガネザル」の意味がわからないんですよね。「朝寝坊の鶏」とか「夜更かしの好きなフクロウ」とかはかみ合っている気がするんですが。なんでしょうか、イエローモンキーのメガネ日本人は出る杭になる度胸がないな、っていう揶揄なんですか。
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# by kourick_yuume | 2011-07-11 16:02 | 日常
 ふぶきはメーラのアカウントをオフィシャルなものに切り替え、ネットラジオのウィンドウを閉じた。

「同志の方々、か・・・どういうことなんだろ」
 ふぶきは自分に尋ねるようにひとりごちる。そして、隣のPCに向き直るとDII(防衛情報通信基盤)にアクセスした。まずは公表されている補給・配給のラインを確認する。市ヶ谷からは東京湾の雪下都市と基地周辺の企業タウン、そして原発のある茅ヶ崎ベースに物資の供給があった。地上の個別共同体への直接的なサプライはない。

「三鷹、三鷹・・・と」
 ふぶきはついで、クローズドなネットワークにアクセスする。ふぶきのパスでどこまで照会できるか心配だったが、地上共同体の分布は確認できた。千駄ヶ谷に三つ、調布に二つ、赤いポイントがあった。三鷹は記録されていない。少なくとも、隊からの配給は受けていないようだった。どうやって生活物資を工面しているのだろう。

「大丈夫だろうか」
 ふぶきは溜息を吐いた。

「ふぶきー」
 そのとき、リビングのほうから声がした。
「はーい」
 それが誰なのかはすぐにわかった。
 ドアのない部屋の入口に向かって、ふぶきは返事をする。
「おーい」
 さっきより近い。
「ちょっと待っててー」
 ふぶきはDIIからログアウトする。

「んー、あっ、こっちかー」
 直線的な声がした。近い。
「そうそう、でも、サクラ、ストップだからね、ここ入っちゃダメなところだから」
 ふぶきは書いていたソースをEmacsでコンパイルすると、テキストをpdfで出力した。
「わかってる」

 ふぶきがちらっと入口を見ると、お盆をもった白衣の女性がにこっと笑った。サクラは半分がジャパニーズ、残りがアメリカンとスパニッシュのミックスで、一見地味そうに見えて、よく見ると可愛さと綺麗さをあわせもった美人だった。頭脳はハイスペックで、人格は穏やか。こういう女性が最強だとふぶきは常々思っている。

「なにしてたの?」
 サクラが言う。
「ネットラジオを聴いてたんだよ」
 印刷機が黒い文字の書かれた白い紙を吐き出す。
「八雲ですか? それとも大湊?」
「いや、空自でも海自でもなくて、民間の」
 状況報告とは違うんだなと言いながら、ふぶきは原稿に目を通す。
 ミスプリントはないようだ。

「民間の!?」
 急にサクラが語気を荒げたので、ふぶきは驚いて顔を上げた。
「電力の無駄です」
「怒った顔も美人だなあ」
 ふぶきが言うと、サクラは頬を膨らませた。
「まあまあまあ」
 ふぶきは立ち上がり、椅子の背もたれから白衣をとって着る。

「サクラの言うことはもっともだけど、なにか理由があるんだろうし、
 これはこれで、わたしは大切なことだと思うよ」
「けど・・・」
 サクラは憮然とした表情をする。
「それに、けっこう、癒されるんだよ」
 ふぶきはサクラにウィンクすると、原稿を黒いファイルに挟み、PCの脇に置いてあったイリジウム携帯電話をもって部屋を出た。

*    *    *

 ふぶきとサクラが出逢ったのは、いまから13年前だった。当時、ふぶきはH大の極地研のドクター1年目で、複数企業・大学との国際的な共同研究のために十勝に新設されたセンターに出向していた。彼女のテーマは地熱エネルギーを効率的に活用したモデルタウン構想についてだった。

 一方のサクラはK大の分生研のドクター1回生で、アメリカのバークリに留学していたところを、教官だった教授に付き添って日本に舞い戻り、その研究室ごと十勝のセンターに出向していた。そこにはK大の研究員も来ており、3ヵ月前の涙の別れをサクラは呪った。彼女のテーマは高効率クロレラの培養、及び、光合成の促進についてだった。

 そこでの生活は3年にわたったのだが、どちらかというと、ふぶきとサクラは助手としての働きが多く、のんびりできる時間もそれなりにあった。そして、あっという間に知己になった二人は、3年目になるころには共同研究者として複数のペーパーを書いていた。その最終的な成果が、いま二人の居住する森町地熱ベース、通称「吹雪研」に結実していた。

 二人が出逢った年はマクロスケールの急激な気候変動、異常事象が確認され始めてから7年目だった。地表の年平均気温は毎年1度低下していたので、当時、すでに7度も低下していた。植生、及び、生物の生活圏も大変動をきたしており、社会的にも政治的にも巷間はすでに慢性的なパニックに陥り始めていた。移民が大規模に発生し、極点に近いところから軍事的に南下を始める国々が現れたのもこの頃からだっただろう。エネルギー資源の奪い合いで紛争も多発していた。

 しかし、そうした社会情勢のなか、彼女たちは比較的に穏やかな生活を送れていた。よくもわるくも研究者だったということかもしれないが、彼女たちの周りには、研究者を除けば、自衛官しかいなかったというのも原因かもしれない。それはもう、民間人から見ても、ただならぬ規律の正しさだった。そして、食糧や情報も必要十分に得ることができていた。

 また、北方警戒のためにO駐屯地の第5旅団も張りつめた状況にあったに違いないのに、研究センターの警備にあたっていた後方支援隊は彼女たちにフランクに接してくれていた。ふぶきの観察によると、とくにサクラへのアプローチは苛烈をきわめ、数少ないチャンスを慎ましやか、かつ、猛烈に生かしたアタックが繰り広げられていた。

 3年後、サクラを含む一行を八雲の基地に送り届けたときなど、ヘリコプター部隊は彼女がヘリに乗るときと降りるときに二度泣いた。ふぶきたちには敬礼だけした。

 ある日、ふぶきが気紛れにその時期のことを尋ねると、
「ぜんぜん知らなかった」
 サクラは口元を両手で押さえ、目をまんまるにさせて、そう言った。
「魔女か、きさま・・・」

 それから、13年。日本の年平均気温は毎年1度低下し続け、異常の始まりから20度低下していた。来年には東京の年平均気温は0度を下回り、夏季の最高気温でも10度を超えることはなくなるだろう。つまり、ツンドラ化するということだ。

 また、極付近の氷床化が進み、海水準は100メートルから200メートル降下した。日本列島も大陸棚がまるまる露出するようになっていた。要するに、いま、地球はとっても寒かった。世界有数の火山地帯である日本はまだ恵まれているという者もいたが、このまま気温が下がり続けることを想像すると、この状況を楽観視できる人類はまずいないだろう。

 生き残る術を見つけ出さなければならないのだ。

*    *    *

「ふぶき、今日、食べてないでしょ」
 サクラは持っていたお盆をテーブルに置いた。お盆には白いお皿の上にクロレラブロックとジャーキー、そして、朱色の茶托の上に湯呑が乗っていた。中身は水だろう。

「ありがと」
 そう言うと、ふぶきはソファに身を投げた。グゥウっと体全体を伸ばし、ウァアっと息を吐く。そして、そのまま腕を横にずらしてファイルとケータイをテーブルの上に置いた。

「今夜は通信障害が発生しているみたいだよ」
 サクラが言う。
「磁気嵐警報は?」
「ありません」
「そう。まあ、あさってには太陽が見えるらしいし、その影響かな」

 ふぶきはクッションに顔を埋めたまま言う。太陽が見えると障害が発生する根拠はとくになかった。サクラは非科学的な発言だなと思ったが、それを言葉にするほどの確たる根拠もなかったので黙っていた。大気科学は専門じゃない。サクラは静かにオットマンをテーブルの脇に寄せ、それに座った。ソファの対面には一人がけのソファがあったのだが、できるだけふぶきの傍に座りたかったのだ。

「あー、サクラがいると安心するなあ」
 ふぶきが言う。
「うれしい」
 サクラは律儀にも頬を赤らめた。
「よし、食べよう」
「え」
 サクラの身体がビクッと反応した。

「ん、どうしたの、これ食べていいんだよね?」
 ふぶきはソファに座り直し、テーブルの上のお皿を指差す。
「あ、ああ・・・そう、もちろん」
 サクラは少し残念だったが、気を取り直してふぶきに微笑んだ。
「ありがと」
 ふぶきはクロレラブロックを口にする。

「ん?」
 もぐもぐと咀嚼する。
「んんん?」
 久々に味わった感覚だった。
「なにこれ、やたらおいしいんだけど? なんていうの、柔らかい」
 ふぶきはサクラに視線を送る。
「いまどき高濃縮のスティック食べてるのはふぶきくらいだよ」
「え、そうなの」
 いつも食べているのは生のゴボウかニンジンのような食感だった。栄養効率はそちらのほうがいいはずだったが、たしかに味気はなかった。

「町の人たちはこっち」
「へえ、すごいなあ」
「でしょ」
 サクラは誇らしげに言う。
「こういう加工って難しいんじゃないの?」
「ちょっとね。でも、町の人たちも応援してくれるから」
 そっかと言って、ふぶきは二本目のブロックをかじった。

「そっちはエゾシカの燻製?」
「そう、おじさんたちがハントしてくれたの。燻製器もわたし用のを作ってくれたんだよ」
 おじさんと言っても、この町には予備自衛官とその家族しかいない。地熱発電所と関連施設も彼らが警備している。猟銃を所持している人もいるだろうが、まさかハチキューでハントしたんじゃないだろうなと、ふぶきは心配になる。食糧不足のこんな時代だ、サクラのためならやりかねない。あとで始末書を覗いてみよう。

 ふぶきは「なるほど」とだけ返答して、今度は湯呑を手に取った。
「うわ、なにこれ、ジャスミン・ティ?」
 さっきから驚きっぱなしだ。
「ううん、香料だけ」
「あるの?」
「この前、八雲のカンファレンスに出たとき、
 北方観測隊に従軍していたサーチャの人にもらったんだ」
 サクラはにっこり笑った。
「きみはほんとに女神だな」
 ふぶきはハァアアアッと長い息を吐いた。
 嫉妬する気にもならないほど、サクラは愛されている。

「これ、明日の婦人部会でもだそうよ。用意できる?」
 ふぶきはジャスミン・ティ風ウォータをごくごくと飲み干す。
「大丈夫だと思う」
 サクラは少し口を尖らせて答えた。
 本当はふぶきのためだけに用意したものだった。

「そこで好評だったら、来週のブリーフィングにもだそう」
「え」
 サクラの顔が強張った。
「だめかな」
「オトコのひとたちは、どうかな?」
 首を傾げる。
「だから、明日、奥様方にだすのさ。たぶん、家で話してくれる」
「そうかなあ」
 サクラは正直、嫌だった。

「そしてさ、そこでもオッケーだったら、次の視察のときにもだそうよ。これは売れる」
 ふぶきは右手の親指と人差し指を輪にして、サクラに向かって満面の笑みを浮かべた。ふぶきはサクラを褒めたつもりだった。
「もう!」
 ふぶきのその表情を見て、サクラは顔を両手で覆った。
「え、えっ?」
「わたしはいやです、反対ですから!」
 サクラは顔を覆ったまま言う。
「え、あの・・・あれ?」
 ふぶきはたじろいだ。どうしてサクラが怒っているのか、まるで理解できなかった。ただ、女神を怒らせてしまったということは、なにか人間である自分に非があるのだろうとふぶきは思った。

「なんか、うん・・・そうだね、ちょっと早かったかもしれない」
 ふぶきはこくこくと何度も頷いた。
「そうです!」
 サクラはまだ興奮していた。
「さっきのはなし、なしだから。明日の婦人部会だけにしよう、ね?」
 ふぶきは両手を広げて腕を伸ばし、なしのポーズをする。
「はい!」
 サクラはひときわ大きな声で言った。
 ふぶきは天井を見上げて、頭をグルグルと回した。

「あの・・・サクラ、ごめんね」
 ふぶきの右手がサクラに向かってふよふよと泳ぐ。
 触っていいものかどうなのか、判断に迷った。
「わたし、ちょっと、わかんなくて・・・だから、ごめんね」
 ふぶきはサクラの顔を覗き込む。
「ふぶき、今日はもう、仕事ないんでしょう?」
 サクラが言う。
「ない、ないよ」
「わたし、今夜、こっちで寝るから」
 サクラが指の隙間からふぶきを見ながら言った。

「うん、うん、一緒に寝よう。ね?」
 ふぶきはここぞとばかりにご機嫌をとる。
 子どもをあやしているみたいだった。
「ほんと?」
「ほんとほんと」
 ふぶきはサクラと視線を合わせて、何度も頷く。
「わかった」
 そう言うと、サクラは両手を下ろして、にっこり微笑んだ。
 そこには女神がいた。
 ふぶきは心底、ホッとして、微笑み返した。

「じゃあ、温泉、見てくるね」
 すっかり立ち直ったサクラは、パタパタと奥の部屋へと消えた。
「ありがとー」
 サクラの背中に声をかけ、ふぶきはソファに突っ伏した。
 クッションに顔を埋め、溜め息を吐き出す。

「つかれた・・・」
 まだ少し、胸がどきどきしていた。
 肺を空っぽにすると、干し大根みたいに全身が脱力する。

「・・・・・・」
 けれど、これはきっと幸せなことなんだろうなと、ふぶきは思う。

「ふぁあ」
 欠伸をする。気持ちいい。
 そして、もう一度、空気を思いきり吸い込んだ。
 ゆっくりと吐き出す。しっかり吐かないと、しっかり吸えない。

「・・・・・・」
 ただ、ふぶきはこうも思うのだった。
 来年も、こうしてサクラと一緒にいられるだろうか。
 いつまでこうやって、安心して疲れ切ってしまうことができるだろう。

「ああ、だめだめ」
 ふぶきは自分の顔をクッションに押し付ける。
 そのまま顔を拭う。化粧はしていないので汚れる心配はない。
 けれど、自分の弱気がまだ、顔の周辺に残っているような気がした。

「こういうときは、えぇっと」
 ふぶきは仰向けになる。
 乱れた髪を整えると、見慣れた天井に両手を伸ばした。

「ま、いっか」
 ふぶきは落ち込みそうな思考をシャットアウトした。

 それに、そう、
 今夜は女神と一緒なのだ、なにも恐れることはあるまい。
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# by kourick_yuume | 2011-07-10 00:00 | お話
 もうブームは去ったかもしれませんが、日本語の乱れというのが妙に叫ばれていた時期がありました。ですが、メディアが主に言及していたのは日本語の乱れというより、語彙が足りないと思われる女子高生だったり、会話の詳細には意識を向けていない若者だったり(要するに、「有り得ない」「ヤバクね?」を連呼せざるを得ない方々)した気がして、そういった「人物」に焦点を当ててしまうことこそが日本語を正しく使えていない証明のような感じがしていました。

 なぜ今になってこんなことを言い出したかと言うと、最近、私の中で言葉を見直すブームだからです。もう、あまりにもおざなりになっている言葉が多すぎます。

 今現在、個人的に最も見直しを図っているのは「無茶言うな」という言葉。ドラマや小説の中でも割りとあっさり使われてしまうこの言葉ですが、本来の意味は「無茶を言うな」ということであり、更に開けば「無理難題を言うな」ということだと思います。だから、

「これ、来週までね」
「そんな~無茶言わないで下さいよ」

 とかいう会話で、「無茶言うな」の力を濁してしまうべきではないと思います。


「これ、来週までね」



 無茶を、言わないで下さい。
 締め切り近し。
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# by kourick_yuume | 2011-07-10 00:00 | 日常
 会議が退屈になって来ると、その場で短歌(と呼ぶには余りに稚拙ですが)を書く癖が数年前から抜けません。要は現実逃避の一環としての行動なので、その内容がどうしても偏ります。

 奥底で繋いで生きてる涙こそ 箱にしまわず愛でて抱き泣け
 今まさに君に会いたくなったなら 犬とビールと歓喜を連れて
 空回る月も生きてく夜の底 世界の不幸を自分の上に

 もうこれを書いたときの気持ちは思い出せないですが、おそらく簡単に表すなら、上から順に、

 もっと意見を言えよ私
 帰りたい
 この場は鬱陶しい

 ぐらいのことだと思います。


 最近、あとになって読み返して愕然としたのは以下の一首。

 この場には居るはずじゃない自分から「やるこたないよ」と叫ばれ死んだ





 なにこれ。
 孤独死するんですか?
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# by kourick_yuume | 2011-07-10 00:00 | 日常


【残りの日数:365日/放送回数:5007回】

 日記でもつけてみることにした。
 あと一年の節目を迎えたからだ。
 どこまで続くかわからないけれども、やってみようと思う。
 目標は、毎日書くこと。



【残りの日数:363日/放送回数:5009回】

 早速一日飛ばしてしまった。
 昨日、放送後に日記を書こうとして結局酔いつぶれてしまった私も悪いが、そもそもは5000回放送記念のお祝いを延々とやり続けるのが悪い。前夜祭や細かいものを含めると37次会になる。遊びすぎ。

 その37次会で酔っ払った吉川さんに絡まれ、
 パーソナリティとはなんぞやという説教を喰らった。

「雪ちゃんはもっと聞き手のことを考えたほうがいいなあ」
「聞き手、ですか」
「もっと相手の感情を引き出すようにすんの。
 女の子を口説くイタリア人みたいに。イタリア人見たことないけど」

 乱暴すぎませんか。



【残りの日数:362日/放送回数:5010回】

 5010回記念をやろう、と言い出した吉川さんに、とうとう巴婆さんが激怒。一週間禁酒の刑が吉川さんに言い渡される。食料や飲料に関しては、巴婆さんが全権を握っているので、その命令は絶対なのだ。

 刑を言い渡された吉川さんは、この世の終わりみたいな顔をしていた。
 まあ、あと362日で終わるのだけれど。



【残りの日数:361日/放送回数:5011回】

 本日は、AD(そんな大層な役職ではなく、要はディレクターの吉川さんの話し相手)の坂本君の誕生日。数少ないリスナーさんからお祝いメッセージが届いており、坂本君の目がちょっと潤んでいた。感動屋ぶりは相変わらず。

「俺、この放送続けてて良かったです」
 もう今月だけで5回目だ、そのセリフは。

 そのお祝いメッセージをくれたのは、ペンネーム「吹雪だるま」という方だったのだけれど、なんと北海道在住だというのだ。青森より北は、完全に凍結して全てのインフラが死んだと思っていたのに、まだネットラジオを聞ける環境にいる人が存在していたとは驚き。

 放送で「北海道はどうですか」と呼びかけたところ、番組後にメールが来ていた。吹雪だるまさん曰く、環境は恐ろしく辛いが、まだ地上で生活している人が居るとのこと。

 以前より私たちの放送を聞いており、今回坂本君の誕生日に乗じて、初めてメールをくれたそうだ。それを聞いて坂本君がまた例のセリフを吐いた。6回目。



【残り日数:360日/放送回数:5012回】

 技術担当の綾子ちゃんと和田君が、第一体育館(倉庫代わり)から音声をテキストに変換できる器具を発掘してきてくれた。

 私が日記をつけていることを言うと、綾子ちゃんが「書くことないんやったら、放送をそのまま入力しちゃえばいいんよ」と言って、探して来てくれたのだ。大変助かる。ありがとう。

 とりあえず本日の放送を、冒頭のみでテスト。
 載るかな?

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 深夜23時です。
 皆さん、今日も一日お疲れ様でした。
 パーソナリティの三橋雪です。

 いつもの通り、東京の状況報告から。
 本日の東京は視界ゼロのホワイトアウトでした。規模自体は軽いもので、明日いっぱい続いた後は止む見込みです。明後日は数時間ですが一ヶ月振りに太陽がのぞきますので、太陽を見ながらのお酒を楽しみたい方は、どうぞ、お酒のご用意を。

 さて、昨日の放送で、北海道在住の吹雪だるまさんからメールがありました。実は放送のあと、吹雪だるまさんとメールのやり取りがありまして、なんとまだ北海道の地上で生活している方がいらっしゃるそうです。もー、驚きました。青森より北の方から連絡を受けたのは初めてだったので。吹雪だるまさん、聞いてくださってますかー。坂本君泣いてましたよ。

 巴婆さんが言っていたのですが、以前は東京と北海道は、飛行機でわずか一時間半の距離だったそうです。案外近かったのですね。今は当然北海道に行くことは出来ませんが、せめて私たちの声だけでも届け続けたいと思います。

 では、クレジットに。

 第5012回になります。
 
 Left Scarecrows の All Night World

 この放送は、吉川健吾、巴婆さん、和田剛、岡田綾子、坂本洋介、三橋雪の提供で、東京は三鷹市にあります、三鷹市立第三中学校からお送り致します。

 地下にもぐらず、未だに地上にいらっしゃる同志の方々。
 深夜零時まで、何卒お付き合い下さい。

 では、一曲目。
 巴婆さんの音楽データより、My Lttle Lover で。
 Now and Then 失われた時を求めて

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# by kourick_yuume | 2011-07-08 00:00 | お話
始まりは由芽さんにお任せ。

(*・◇・) < キメテー!
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# by kourick_yuume | 2011-07-07 02:00 | 相談
ヽ(*゚д゚)ノ < タナバター!
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# by kourick_yuume | 2011-07-07 00:00 | 日常